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こんな何もない、ただ危険なだけの遺跡に、なんで来ちゃったんだろう。
もちろん、この遺跡を詳しく研究した研究者はいない。必要がないからだ。
だから、まだ誰も知らないものがここに残っているかも知れない。それがくだらない物でもいい。
私だけの発見。私だけの研究成果。
私は振り返って妹の姿を見た。
私だけの、じゃないわね。私達だけの。
でも、それだけじゃなかった。
ずっと、気になっていたのだ。
行かなければいけない気がしていた。
そして、それは前世の記憶に関係しているような気がしていた。
愛らしい妹から目を離し、遺跡に目を移す。
その瞬間、私の身体は突然起きた強い流れに翻弄され、遺跡の表面にたたきつけられた。
「おねえちゃん……!」
微かに聞こえる妹の声。ごめんね、心配かけて。痛いけど、大丈夫。
私がたたきつけられたのは、遺跡表面の四角の一つだった。この四角から中をのぞく事が出来た。
大きな四角。そして無数の小さな四角。
見た事あるような……なんだろうこれ……。
それにしても、この四角、中が見えるのに中に入れない。何かに遮られているような……。
表面には、まだ他にも四角がある。どれか一つくらい、入れる四角があるだろう。
右隣にある四角へ、ゆっくりと動いた。
大きな流れの中でも、その四角へ向かう流れがあるように感じたからだ。
その微かな流れはだんだん強くなり、私の身体はその四角へ吸い込まれていった。
激しい痛みが、右肩を貫いていた。
何かが突き刺さったような、声も出せない程の激痛。
あたり一面が、真っ赤に染まった。
突き刺すような痛みは、切り裂くような痛みに変化していた。
右肩から脇腹、腰、そして尾びれへ……。
私の身体が切り裂かれていくのがはっきりと分かった。
「おねえちゃん!」
遠くで妹の声が聞こえた。
私の血で濁った水と共に流されていく私には、あの妹のつややかな髪も、輝くような尾びれも、もう見る事は出来なかった。
「ごめんなさいおねえちゃん……あたし、おねえちゃん助けられなかった……」
もう痛みは感じなかった。妹の声を聞きながら死ねるなんて、幸せだった。
「でも、今度は……」
その続きを聞く事は、出来なかった。
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