6人が本棚に入れています
本棚に追加
「はーい、今日は、光の屈折の実験でーす」
仁美先生ののんびりした声が響いた。
……って、え? 何これ。私、さっき死んだはずじゃ……。
「前回、水の屈折率の話はしたよね? 今日はそれを確かめまーす」
仁美先生が私の方を見てる。
ってゆうか、なんで私、この人の名前を知ってるんだろう。
ーー前世の記憶。
そうか、ここは数万年前、まだ「地上」っていうものがあった時代なんだ。
私の前世は、この時代の「人間」だったんだ。
って事は、私、前世の自分に戻ってきてしまったって事……?
窓。そして黒板。大きな四角。机たち。小さな四角。
そっか。あの遺跡は……この学校なんだ。
でも……妹は……あの子は……。
「宮内さん、何ぼーっとしてるの?」
仁美先生が、悪戯っぽい目で私を見ていた。
そうか。この頃はまだ、先生は私を苗字で呼んでいたんだっけ。
「ほら、水とガラスって屈折率が同じだから、水に入れると全く見えなくなっちゃうの。
だから……、今度は気を付けてね?」
……えっ!?
仁美先生は、私の耳元に、そっと口を寄せた。
「先生ね、前世、あなたの妹だったのよ。遠い未来、人魚の国で」
先生の、ツヤッツヤなストレートの美しいロングヘアが、ふわりと揺れた。
最初のコメントを投稿しよう!