【書籍化作品】記憶

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「はーい、今日は、光の屈折の実験でーす」  仁美先生ののんびりした声が響いた。  ……って、え? 何これ。私、さっき死んだはずじゃ……。 「前回、水の屈折率の話はしたよね? 今日はそれを確かめまーす」    仁美先生が私の方を見てる。  ってゆうか、なんで私、この人の名前を知ってるんだろう。  ーー前世の記憶。  そうか、ここは数万年前、まだ「地上」っていうものがあった時代なんだ。  私の前世は、この時代の「人間」だったんだ。  って事は、私、前世の自分に戻ってきてしまったって事……?  窓。そして黒板。大きな四角。机たち。小さな四角。  そっか。あの遺跡は……この学校なんだ。  でも……妹は……あの子は……。 「宮内さん、何ぼーっとしてるの?」  仁美先生が、悪戯っぽい目で私を見ていた。  そうか。この頃はまだ、先生は私を苗字で呼んでいたんだっけ。 「ほら、水とガラスって屈折率が同じだから、水に入れると全く見えなくなっちゃうの。  だから……、今度は気を付けてね?」  ……えっ!?  仁美先生は、私の耳元に、そっと口を寄せた。 「先生ね、前世、あなたの妹だったのよ。遠い未来、人魚の国で」  先生の、ツヤッツヤなストレートの美しいロングヘアが、ふわりと揺れた。
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