モトリーナの村

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モトリーナの村

「そう言えば名前を教えていませんでしたね。私はナリユキ・タテワキと申します」 「申し遅れました。私はネゴルド・ギャラバンと申します。この先にある村の村長をしております。ナリユキ様にはお礼をしたいので、私の家をご紹介させていただきます」 「優遇されるようなことはしていませんよ。私も生きるために倒しただけなので」  そう、会話を交わしながら歩いていると、わりと活気がある村に来た。ベタではあるが普通の人の中に、獣耳の獣人などが共存している。始めの村が割と穏やかなところで心底安心する。 「ここの村はどのような種族が住んでいるのですか?」 「人族と獣人族ですよ。ここのような田舎だと平穏に暮らせるのですが、王国へ行くと奴隷として売買にかけられているなんて話も耳にします。あくまで話なので確証は無いのですが」 「成程。いい村じゃないですか」  根拠(エビデンス)か。そういえば趣味の動画配信をしているときに、よくアンチからそういうコメントきていたな。ガン無視だったけど。風評被害ってのはどこからともなく出てくるものだ。まあ動画サイトでは完全にぼっちだったけど。いや、プライベートでもバリバリのぼっちだわ。 「ここが私の家です」  村の村長と言っても15坪ほどの平屋。一人暮らしなら十分広いが、家族がいるならもう少し大きい方がいい気もする。 「村長さんお帰りなさい。後ろの方は?」  家に招かれて上がったのはいいものの、村長とは似ても似つかない女性が出てきた。きめ細かい白い肌に、絹のような黒髪。いや、もうぶっちゃけた話をすると、可愛い日本人。色素が薄いのか目は茶色。黒い服を着ているのでスタイルが丸わかりなのだが、出るところは出ていて引っ込むところは引っ込んでいる、グラビアアイドルばりのスタイル。と、いうかめちゃくちゃこっち見てる。 「スーツ? もしかして日本人の方ですか?」 「ええ、そうですが」  謎の間があり、村長を完全に置いてけぼりにしている俺と女性。 「私は帯刀成幸(タテワキナリユキ)と申します」 「私は麻木美玖(アサギミク)と申します」 「ミク様もナリユキ様も同郷の方ですか? せっかくですし上がってお話をしてください」  村長にそう言われたので、とりあえず上がって話すことにした。 「まずは本当にこの村を救ってくださってありがとうございます!」 「村長、この方は何をされたんですか?」 「グァイアスを討伐してくれました」 「へえ。それは凄いですね! 私も手こずっていたのに。ナリユキさんはどのような方法で倒したのですか? 結構素早い魔物だったと思うのですが」 「ええ――実はこうやって」  と、言われるので、仕方なくデザートイーグルを手から出した。自動で消えるのは便利だが、手の内を悟られないために、ホルスターも出して、常備をしておく必要があるかもしれない。 「凄い――銃が出てきた」 「これは王国兵の一部しか使用許可が下りていない代物ですな」 「銃はそんなに珍しいのですか?」 「そうですね。その銃であのグァイアスを倒したという事ですね? お見事です!」  めちゃくちゃ褒めてくるなこの村長。まあ、社会貢献をしたということなら悪い気はしないが――。 「鑑定してもいいですか?」 「鑑定? RPGとかでよくある鑑定士のようなスキルですか?」 「そうですよ。スーツのままなら、この世界に来て間も無いと考えると、スキルとかも知らない感じですかね?」 「そうですね。あることが知らなかったかです」
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