モトリーナの村

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 ミクさんに一通り案内してもらった後、休憩ということで、二人で小さな噴水がある広場で、子供が遊ぶところを眺めながら話すことになった。 「ナリユキさんはどのような経緯でここの世界に?」 「交通事故です。社用車で走っているところ、対向車からトラックが突っ込んできて死んだと思ったのですが、この世界にいて」 「やっぱり命を落としたという共通点は同じですね。私は火事で死んでしまったんですよね。でもこうやって同じ境遇の人と出会えてホッとしました」  眩しい――可愛い――。そんな無邪気な笑顔を見せないでくれ。久しぶりにドキッとしたわ。基本、どうせ見向きもされないだろと思いながら女性とは接するからシャットアウト。無になろう。 「この世界に来る前はどんな事されていたんですか?」 「そうですね。私は営業職に就いていましたよ。ミクさんは何をされていたんですか?」 「私は学生なんですけど、動画配信をしたりしてお小遣い稼いでいました」  うわあ。このルックスとスタイルだったらすぐにバズりそうだな。 「どんな動画上げていたんですか?」 「ゲーム実況です。あとは、たまに恋愛お悩みコーナーとかも開いていましたね」  それを言われて初めて気付く。声も可愛いし、滑舌もしっかりしている。グラドルと声優の二ついけるんじゃね? って。うーむ。ゲーム女子でここまで可愛い人は正直初めて見た。俺、めちゃくちゃラッキー。ただし、油断してはいけない。そうここから何かが起きるというフラグを信じてはいけないのだ。後々、辛くなるだけ。 「ゲームは何をされていたんですか?」 「 Champion War(チャンピオン・ウォー)というFPSのゲームです」 「え? マジ?」 「知っているんですか?」  と、しばらくこんな感じで、FPSの話で盛り上がった。で、また街を散策したが、冷静に考えたらこんなに可愛い女とデート気分で、村を歩くことができるなんて夢のようだ。異世界最高って感じ。あっちの世界じゃ有り得ない話だったもんな。  で、ミクさんと一緒に歩いていて思ったのが、村の皆から慕われていることだ。可愛いのは大前提になるかもしれないが、コミュニケーション能力が高いのと、人当たりがいいこと。質問を引き出すのが上手い。最大のポイントは相手に興味を持つことに長けている。だから、ポンポンと話をしたくなる。1年前から始めて、チャンネル登録者30万人程いるらしいので、相当なやり手だと思った。頭が上がらん。 「ここの先に丘があるので、そこで創造主(ザ・クリエイター)で何を出せるか試してみませんか?」 「そうですね」 「あと、今更ですけど、ナリユキさんは私に敬語は使わなくていいですよ。私より7つ上なんですから。それとさん付けじゃなくて、呼び捨てでいいですよ!」 「それもそうか。じゃあ敬語は無しでいくよ。ただ――さん付け無しか。ミクちゃんでもいいな?」 「はい! 全然いいですよ! やっぱりそっちのほうが話しやすいですね♪」  無邪気な笑顔がいちいち可愛い。これはあれだ。いわゆる小悪魔ってやつだ。いや、能力が天使の翼(エンジェル・ウイング)だから天使なのか? 純度100%の笑顔なのか? まあ。とにかく今は実験に集中だ。恐らく割となんでも出せるであろうこのスキルで試したいことがあった。衣食住の住だ。家を作ることが出来れば相当楽だぞ。
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