たいせつなきょうだい

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 ハルは、『彼』を目に()めた瞬間、パッと花が咲いたような笑顔を見せた。 「セイ、おはよう。元気そうだね」  名を呼んで駆け寄る。それに対し、『彼』も花笑(はなえ)みを少年に向けている。 「今日は晴れて良かった。昨日みたいに、ひどい雨で昼も暗いと、気が滅入(めい)っちゃうもん。そう思わない?」  向かい合うなり、駆けてきた勢いのまま話し始める。  ずい、と鼻を突き合わせる勢いで顔を近付けたが、『彼』は動じていない。むしろ、ハルと同じく顔を寄せている。  ハルはそれに、にっ、と歯を見せると、ぴょんと少しだけ後ろに跳んだ。それから、少し開いた『彼』との間に向かって手を伸ばす。 『彼』もハルに手を向け、互いの手が合わさった。  ひやりとした温度と感触が、ハルの手に伝わる。すると、その顔が少し曇った。 「……これだけあったかい日でも、冷たいんだね」  寂しそうに低く呟く。合わせた手の温感は、ハルの期待に添うものではなかった。 「あれから、ずっとそうだ」  ハルは眉を下げ、肩を落とした。それは、『彼』も同じだった。  そろって俯き、少しの沈黙。  それから、同時に顔を上げると、歯を見せて笑い合う。 「大丈夫だよ。いつもどおり、僕があっためるから」  ずっと合わせている手のひらが、じわじわと熱を送っているのをハルは感じていた。合わさった部分が、体温で微かに湿ってくる気配がある。 「ほら、ちょっとずつあったかくなってきた。僕たちそっくりだけど、これだけは似てなくて良かったね。僕も手が冷たかったら、セイの手、ずっと冷たいままになっちゃうもん」  ハルは、どことなく得意気な声と顔を、『彼』へ向ける。 『彼』は、ハルに向き合っている。その顔は、どことなく得意気だ。 「いくら冷たくても、僕があっためるよ。だから、安心してね」  同じ顔が向かい合う部屋の片隅で、ハルは『彼』に笑いかけ、合わせた手を温め続ける。
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