冷たいアナタ

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 ぼんやりと物思いに耽っていたら、いつの間にか日が暮れてしまっていた。  さあ、明かりを灯そう。もうすぐ陽真が帰ってくる。彼が帰ってきたら、とびきりの笑顔で迎えてあげよう。そうすれば、またあの温かい笑顔をみせてくれるかもしれないから……。 「おかえりなさい!」  玄関からリビングへ向かう陽真に声をかけたけど、私の声は彼の心に届かない。「ただいま」と返事をくれるどころか、視線さえも合わない。夫は眉間に皺を寄せたまま天井を見上げ、煌々と灯された照明にチラりと視線を走らせた。  “遅かったのね。どこに行ってたの?”、“誰と一緒だったの?”、“食事は?”……聞きたい事は山ほどある。だけど、どれ一つ聞くことが出来ない。  陽真は半ば倒れかかるかの様に、ドサリとソファーに身を投げ出し、ネクタイの結び目に指をかけて緩めた。苦しげな表情に、少しでも癒してあげたいとそっと頬を撫でるけど、その表情は更に悲しく歪んだだけだった。  もう、私では癒す事が出来ないの?  いつからなのか、どうしてなのか、考えようとするとガンガンと頭痛がしてくる。まるで石か何かで思い切り殴られているかのように。他の全ての感覚が無くなって、頭の痛さだけが思考を支配していく……      
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