殺してくれて、ありがとう。

3/10
前へ
/10ページ
次へ
悲鳴と共に当主の首が僕の足元に転がる。2人の娘を抱えて部屋の隅へと逃げる妻。僕は3人にゆっくりと近づいた。 「来ないで……!!来ないでやめて!!娘だけは……!娘だけは助けて!!」 懇願したって、無駄だよ。 僕の仕事はこれなんだもん。仕方ないよね?? そうだよね?? 僕は、妻とその娘の首を3つ同時に掻き切った。床には赤黒い血と4つの首が転がっている。 流れるクラシック音楽が心を穏やかにさせた。 さてと。これで仕事は終わり。さっさと家に帰らなきゃ。 侵入した窓から出ようと思い、ゆっくりとした足取りで窓の方から向かっていく。しかしその途中、部屋の外から何かの気配を背中に感じた。 「だれ………??出てきたら命は助けるよ」 大抵のやつはこれで出てくる。出てきたらさっさと殺せばいい。 僕の言葉を聞いて誰かが部屋の外から思い扉を開ける。赤黒い湖に見向きもせず、そいつはこちらへ裸足で向かってくる。 後ろを振り返り、僕はそいつに向かってワイヤーを飛ばした。 はずだった。 真っ白な雪のような髪色にルビーのように鮮やかな赤い瞳をしたその少女。 なんて綺麗なんだろう。 僕は、その少女に見とれてしまい、ワイヤーを無意識で彼女から打点をずらした。打点かズレたワイヤーは、僕の手から離れてゆったりと赤黒い湖の中に落ちていく。 僕よりも少し背の小さい彼女は、赤黒く染まった僕の手を握り、泣きながらこういった。 「殺してくれて…ありがとう!!」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加