金魚の尻尾

　
　祖母はそれから両親に、友だちが金魚を飼っていたが増えてしまったのを引き取った、どうしても飼いたいと頼み込んだそうです。きびしい両親を説得するのはたいへんでしたが、なんとかお許しを得て、祖母はその金魚を飼うことになったのでした。

　その金魚が今わたしのうちにいる金魚だと祖母はいうのですが･･････いくらなんでもそれはないですよね。祖母が小さい頃のわたしを喜ばせようと思ってしてくれた作り話なのでしょう。
　第一、祖母の小さい頃から生きているとしたら金魚にしては長寿すぎます。布が金魚になるなんてありえない、ではなくそんなことを考えてしまうあたり、わたしも祖母に影響されているのでしょうか。
　わたしは件の金魚を眺めました。金魚鉢の中で金魚は尻尾を振りながら泳いでいます。その上の端から、糸がほつれているように見えたのですが、尻尾がゆらゆらと揺れているのですぐに見えなくなってしまいました。