金魚の尻尾

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金魚の尻尾

   わたしの祖母から聞いた話です。  祖母の小さい頃の趣味は、「宝物集め」でした。余ったボタン、少ないお小遣いで買ったビー玉、道で拾った鳥の羽なんかをクッキーの缶に貯め込んでは、毎日眺めていたそうです。  そんな祖母が春のある日、お使いからの帰り道で拾ったものがありました。地面に散った桜の花びらに埋もれるように落ちていたのは、赤い布の切れ端のようなものだったそうです。形は三角形で大きさは桜の花びらと同じくらい、さらりとした手触りをしていて、鮮やかな赤色が上から下にかけてグラデーションになっている布でした。  誰かが着物をどこかに引っかけて破いてしまって、切れ端を落としていったのかもしれない、と祖母は思いました。しかし、こんなになめらかな手触りで、きれいな色の布を使った着物は見たことがありませんでした。着物を破ってしまった誰かは気の毒だけれど、この布は宝物にするしかない、と祖母は思ったそうです。
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