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どうすれば機嫌が直るだろうかと頭を悩ませていると、ふいに夏帆がこちらに顔を向けてきた。口に咥えたアイスの棒をがじがじと噛んでいる。懺悔するなら今だぞ。そんな台詞が脳裏に浮かび、背筋が凍る思いだった。
「と、ところで今クーラーは何度?」
僕は思わず話題を逸らした。事実、この部屋は寒過ぎる。僕は両腕で自分の両肩を抱き、ふるふると震えた。喋ると白い息さえ出そうな気さえする。
「それ今関係ある?」
「ごめん、無いです」
「まああなたが購入された特注のエアコンでしたら、今最低温度ですけど」
「最低温度!」
思わず大きな声が出る。特注のクーラー。これはこの家の住人ーーーつまるところ、僕と夏帆のことだが、特殊体質のため、然るべき許可を得て特注した、通常のエアコンの設定範囲を超えて温度設定可能な代物である。
「何か文句でも?」
「いや、文句って訳じゃ無いけど、流石に最低温度は…」
「真夏なら普通の設定温度だよ」
そう言って、また夏帆はそっぽを向いてしまった。機嫌の悪い時の夏帆は、とことん拗ねてまるで氷の姫みたいに冷たい態度を取る。ある意味、ありのままの姿なのかもしれない。なんて冗談を考えている場合では無い。
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