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そして無事、納品を完了させ家に帰ってきたら、案の定夏帆の機嫌がすこぶる悪くなっていたのだった。
「ほんとさあ、雪人はお人好し過ぎるんだよ」
「ごめん。お客の困ってる声聞いたら居ても立っても居られなくなって」
「だいたい、納品ミスだって後輩が悪いんじゃん」
「悪気があった訳じゃないし、みんなでミスをカバーし合っていかなきゃだからさ」
「この前だって急遽トラブルだ、って休日出勤してたじゃん!」
「あれは僕の担当のお客のトラブルだったから…」
「そんなの、それこそその後輩にでも助けてもらえばよかったじゃん!助け合いなんだからさあ!」
抑えていたものが爆発し、夏帆は怒りを露わにした。目には薄っすらと涙が滲んでいる。
「本当、ごめん…」
僕はただ謝ることしか出来ない。これが一度二度のことならまだしも、僕には前科がたくさんあった。突然の休日出勤や平日の大残業。だから、今回に関しても夏帆には頭が上がらないのだった。
「…もういいよ」
「埋め合わせは必ずするから」
「先週も同じこと言ってた」
「来週は後輩に仕事押し付けてでも、夏帆を優先するから」
「雪人にそんなこと出来るの?」
「…何とか頑張る」
なんて情けないことこの上ない台詞だろう。どうしてもっと豪快に出来るに決まってるだろ!くらい言えないのか。
夏帆はと言うと、また背を向けて黙ってしまった。おろおろするだけの僕とひたすらに拗ねる夏帆。先に均衡を破ったのは、氷の姫の方だった。
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