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「波打ち際で海水をパシャパシャ掛け合うやつ、やろうね」
悪戯っぽく、夏帆は片目を瞑ってみせた。
「海はなあ…山とかはどう?夏らしく」
「えー、山なんて虫たくさんいるし暑いしやだよ」
「夏帆は特別暑がりだもんね」
「うるさいなー」
クーラーが空気を吐き出す音が聞こえる。相変わらず夏帆は薄着だった。
「体質なんだから仕方ないじゃん」
「じゃあ川とかは?涼しいし、バーベキューもできるよ」
「うーん、それも捨てがたいけどやっぱり海がいいー」
予想以上に手強い。僕としては、色白な体を衆目に晒すことにも少し抵抗があるが、何より海に浸かって泳ぐのはーーー。
「そもそも、これは埋め合わせなんだから、雪人に選択権はありませんー」
そう言うと、夏帆は両手を交差させバツを作って見せた。
「そんな殺生な」
「それにさあ」
不意に、夏帆がテーブルに手を置き、前屈みで僕の目を見ながら言った。キャミソールから露出した肌が顔を覗かせ、目のやり場に困ってしまう。
「な、何?」
「雪人は私の水着、見たくないの?」
急にいじらしい目で見つめられ、僕は思わずドキッとしてしまう。
「別にそう言うわけじゃ」
水着。不覚ながら、その甘美な響きに僕は思考能力を奪われる。小柄ながら、出るとこはしっかり出た夏帆の姿が嫌でも脳裏に浮かび、そこに水着と来たものだから、僕は平静を保つのに必死だった。
「だめ?」
潤んだ瞳で首を傾げる夏帆に、僕の方は首を縦に振るほか無かった。
「…うん、わかった。海でいいよ」
「やりー」
先ほどとは打って変わり、夏帆は両腕を上げ力一杯喜びながら、再びフロアチェアに背中から倒れていった。
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