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「雪人の負けだね」
にやりと笑う夏帆を見て、先ほどの態度が全て計算である事を僕は確信した。これが小悪魔というやつか。僕はすっかりしてやられたのだ。
「いやはや、雪人が変態で助かった」
「ひ、人聞きが悪いよ」
「でもこれで水着が見れるね」
ニヤニヤ笑う夏帆に、僕は言葉を返す気力も無くなった。こたつ机にがっくりと頭を乗せ、もぞもぞと体を机の下に埋めた。
ーーーー※ーーーー
「そろそろお腹空いたね」
時刻は既に六時を少し回ったところだった。水着騒動の後、特にやる事もなくだらだらと過ごし、気がつけば空腹を感じる時刻となっていた。
「雪人、お昼は何食べたの?」
「ラーメン食べたよ」
「またラーメン?好きだねえ。体に良くないよ、太るし」
「夏帆は何食べたの?」
「私は素麺食べたよ」
「好きだねえ」
「素麺はヘルシーだもん」
頬をぷくっと膨らませながら、夏帆はふかふかのフロアチェアから立ち上がった。
「そろそろ夕飯作ろっか」
「そうだね」
僕もこたつ机から立ち上がる。日によるが、夕飯は二人でキッチンに立つことが多い。各々が役割分担をしたり、場合によってはそれぞれが食べたいものを作る、というのが我が家のスタイルだった。
「今日は何にする?」
「うーん、昼がラーメンだったから和食か洋食がいいな」
「私は素麺だったから中華か洋食がいい」
「じゃあ洋食かな」
二人してキッチンに向かい冷蔵庫を開けた。食材からメニューを検討し、結果カレーを作ることに決定した。
「結局洋食じゃなくなっちゃったね」
「考えようによってはカレーも洋食だよ」
献立がカレーとなり、今日の調理分担は夏帆が具材の下ごしらえをし、その後の調理を僕が行うということになった。
「野菜切る方が面倒じゃない?」
「この暑い中火の前に立つ方が億劫だよお」
そう言って、夏帆は野菜の下ごしらえに取り掛かった。人参やじゃがいもの皮むきからカットまで、実に手際が良い。僕はそれをリビングのこたつから見守る役となった。
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