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第三話 自給自足は必須なんです。
ジョシュア達が旅立って二週間が過ぎようとしていた。
目的地までの道のりは険しく、困難な道のりだったが楽しくもあった。
今日もジョシュアとリオスは夕食用の獣狩りをしていた。
「・・・動くなよ・・・」
ジョシュアはそう呟き、慎重に弓の狙いをつける。
その様子をリオスは本を読みつつ眺めている。
「ここだっ!!」
そう言ってジョシュアは矢を放つ。
『ヒュンッ』と宙を斬る音と共に矢が獲物めがけて放たれる。
「ヒィヒィーン!!」と獣の叫び声が森にこだまする。
「よっし!!マグナディア確保!!」
ジョシュアはガッツポーズをとりながらリオスの方を向き、自慢げに叫ぶ。
「・・・随分時間がかかったな?」
リオスは読んでいた書物を閉じジョシュアにそう答える。
「いや、その・・・俺弓矢は苦手でさ・・」
そう言ってジョシュアは頭を掻きながら恥ずかしそうに顔を伏せる。
「苦手、なんて言ってられないぞ?これからはどんな武器でも使いこなせなければいつか死ぬ。だから苦手な武器はなくしておけ」
リオスはジョシュアの弓矢を取るとそれを構える。
そしてすぐに矢を放つ。
ジョシュアの倒した獲物のすぐ隣で『ドサッ!!』という音がする。
そこにはもう一頭のマグナディアが倒れていた。
「すげ・・・」
ジョシュアは素直に感心するのだった。
一方
フィリアとアヤの二人はキャンプ地で食事の支度をしていた。
「ふふふ~ん♪」
鼻歌交じりでフィリアは野菜を切り、鍋に入れていく。
「・・・・?」
アヤは目の前に出された魚をどうすればよいのかわからず、ただナイフを握り立ち尽くす。
「どうしたの?アヤさん?」
普段なら何事もそつなくこなすアヤが立ち尽くしていることに疑問を持ったフィリアが問いかけるとアヤは少し顔を赤らめながらフィリアに答える。
「いえ・・・その・・・」
「うん」
「これは・・・どうすればよいのでしょうか・・・」
「え?」
アヤは恥ずかしさから、マフラーで口元どころか顔半分を隠す。
「もしかして・・・サーモンは調理したことないの?」
「はい・・・申し訳ありません・・」
見つめあう二人。
「クスッ・・・あはははは」
そしてフィリアは思わず笑いだしてしまう。
「申し訳ありません・・・私の暮らしていた地域では魚を食べる習慣がなかったもので・・・」
アヤは顔を真っ赤にしながらフィリアに謝罪する。
「大丈夫ですよ?アヤさん」
笑顔でフィリアはそう答えると、アヤの前に置いてあったサーモンに手を伸ばす。
「この魚はまずこうして・・・」
そしてフィリアはアヤに魚の調理法を教える。
手際よくサーモンを三枚におろしていくフィリアをアヤはしきりに
「なるほど・・」や
「そこにナイフを入れるのですか!?」
などと呟きながら必死にその行為を見ている。
・・・・・
「でも、意外ですね?アヤさんなんでもできるイメージがあったのに」
そういってフィリアは調理を続けながらアヤに微笑みつつ問いかける。
「はい・・・一応基礎料理は作れるのですが、その・・・普段から作ることが
ないのであまり得意ではないのです・・・」
「あの・・・フィリアさん」
「ん?なに?アヤさん」
「・・・やはり、女たるもの料理が出来なくてはいけないのでしょうか・・・」
「え?」
「い、いえ!そ、その!・・・やはり、世の殿方は料理ができる女性を好むのでしょうか・・・私はあまり、そういった知識がなく、その・・・」
アヤはとても真剣な表情でフィリアに問いかける。
「うーん・・・どうなんだろうね?私も詳しくはないから・・・でも私はジョッシュが美味しいって言ってくれるのがうれしくて、それで勉強したの」
「なるほど・・・」
「アヤさん・・・好きな人いるの?」
「!?な、なにをいってるのですか!!わ、私にそのような方はおりません!!」
あきらかに慌てるアヤとその様子を見て微笑むフィリア。
フィリアとアヤは久しぶりの女性同士の会話を楽しんでいた
そして日が沈み始める。
ジョシュアとリオスは仕留めた獲物をその場で捌き、肉はブロックに切り分け、皮をたたみ、狩猟カバンに詰め込む。
内臓類は土の中に埋め、供養する。
「いやぁ大量だな!リオスにぃ!」
ジョシュアは笑顔でリオスに話しかける。
「あぁ・・・そうだな。これでしばらくは肉に困らんな」
リオスはそう言って先ほどブロックに分けた肉の一つを手に取り、塩をなじませる。
「ん?何してんだ?リオスに?」
「うん?これか?これはな塩漬けにするんだ」
「なんで?」
「そうすれば、しばらくは腐らないし、そのまま食えるからな」
「へぇー・・・すげぇなリオスにぃ・・・何でもできんだな?」
「フッ・・・伊達に一人で暮らしていたわけではないぞ?」
そして二人はフィリアとアヤが待つキャンプ地へと向かう。
「あ、おかえりなさいジョッシュ、リオスさん」
「ご苦労様です、ジョシュア様、リオス様」
狩りから戻った二人を出迎えるフィリアとアヤ。
「ただいまー姉さん!!アヤさん!!」
「遅くなってしまったな?すまない二人とも」
「いえ、大丈夫ですよリオスさん。ちょうどスープが出来たところですよ」
「・・・私がちゃんとしていれば・・・もう少し早くできたのですが・・・」
「?なにかあったの?姉さん?」
「ふふふ・・・内緒♪」
そんなやり取りをし、四人は焚火のそばに座る。
この日の献立は
サーモンのクリームスープ
ライ麦のパン
マグナディアの串焼き
の三品だった。
「ん!うんまいっ!!」
ジョシュアはクリームスープを味わう。
「そう?よかった~!まだまだあるから、たくさん食べてね?ジョッシュ」
「うん!!」
「・・・気のせいか?今日の切り身、ずいぶんデカいな?」
「・・・気のせいですリオス様」
「え?」
「気の!!せいです!!リオス様!!」
「そ、そうか・・・すまないアヤ・・」
こうして和やかな食事をする四人であった。
食事を終え、フィリアは先に眠りにつく。
アヤは眠るフィリアのそばで周辺を警戒しながら休んでいた。
そしてジョシュアとリオスは・・・
・・・
「これで!どうだッ!!!」
ジョシュアはリオスに斬りかかる。
リオスはそれを刀で受け流す。
「勢いだけで攻撃するな・・・相手をよく見て、次の攻撃を想定しろ!お前の剣は直線的すぎる。相手に次の剣筋を見せるなっ!」
リオスとジョシュアでは戦闘スタイルが似ているという事もあるが戦闘経験で抜き出ているリオスは即座にジョシュアの欠点を見抜く。
「くっそ・・・まだまだぁ!!!」
ジョシュアはそう叫び、再び斬りかかる。
「ジョッシュ!何度言ったらわかる!勢いだけで来るなと・・・言っている!!」
そして再びリオスの刀がジョシュアの剣を受け流す。
「それは・・・さっき見たんだぜ!!」
そういってジョシュアは腰に備えていたナイフを抜き、それをリオスの首元に突きつける。
「・・・ふっ・・まぁいいだろう・・・」
そういってリオスは微笑む。
「はぁはぁ・・・・まだまだだなぁ・・・俺・・」
ジョシュアは剣をしまうとその場に座る。
「まぁ・・・最初から比べればよくはなったがな・・」
リオスも剣をしまい、ジョシュアの隣に座る。
二人は旅に出たときから剣術の訓練に励んでいた。
ジョシュアはけっして弱くはないが、まだ実戦経験の少なさのせいか実力を発揮できずにいる。
それを見かねたリオスが実戦形式でジョシュアの訓練をしていた。
「ジョッシュ、お前秘技は使えるな?」
秘技・・・それは剣術や槍術などを鍛えた者のみが使うことのできる特殊な技。ジョシュアとリオスは師匠のマルガスから秘技を習っているので使うことができる。
「あぁ・・・一応な?じいちゃんに習った技ならあるぜ?」
「翔波斬か・・・使い勝手はいいが決め手には欠けるな・・」
「俺にはまだ・・・これしか使えないよ」
「まだ、経験が浅いのだろう・・・焦るなジョッシュ」
「わかってはいるんだけどさ・・・焦るよ・・」
「・・・」
「俺が強くならなきゃ・・・フィリアを守れないだろ?」
「・・・久々に聴いたなお前がフィリアを名前で呼ぶのは・・・」
「・・・うるせぇよリオスにぃ・・・」
「あの時の誓いか・・・」
「あぁ・・・」
そういって二人は立ち上がり、キャンプへと戻る。
「ジョッシュ、お前は先に寝ろ。俺は少しやることがあるんでな」
「ん?なんだよ?手伝うぜ?リオスにぃ」
「いや、大丈夫だ・・・お前は少しでもフィリアのそばにいろ」
「アヤがそばにいるとはいえ、人数は多いほうがいい」
「・・・わかった・・・んじゃ・・・おやすみ!リオスにぃ」
「あぁ・・・おやすみ」
・・・・
「・・・・見つかったかアヤ?」
ジョシュアとフィリアが寝付いたのを確認し、リオスはアヤを呼び出し二人で話をする。
「・・・・申し訳ありません・・・まだ見つかっていません」
「そうか・・・なるべく早く見つけたいとこなんだがな・・」
「明日にはドウジャンの村に着く予定ですので、そこで情報収集致します」
「頼んだ・・・ジョッシュに気づかれる前に見つけなければな・・・」
・・・・
心地よい日差しが眠るジョシュアを照らす。
「ん・・・・朝か・・・・」
「あ、おはようジョッシュ・・・よく寝たね?」
「油断しすぎだな・・・・ぐっすり寝やがって」
「おはようございますジョシュア様」
こうしてまた、新しい一日が始まる。
目的地まではまだ、長く険しい道のりだろう。
それでもジョシュアたちは歩き出す。
「行こう!!みんな!!」
とジョシュアが言ったその時、見知らぬ少女がジョシュアたちの前に現れる。
「見つけましたよ!!!極悪人!!!!」
少女は身の丈よりもデカい槍をジョシュアに向けてくる。
「・・・え?誰?」
思いがけない来訪者にポカーンとするジョシュアたちであった。
To be continued
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