第六話 その手が掴むもの

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第六話 その手が掴むもの

不穏な影がジョシュアを見つめている。 ジョシュアたちが戦う村から少し離れた丘の上に彼らはいた。 「・・・目覚めたな・・・」 男は遠くからジョシュアを見つめる。 白く長い髪が風に揺られる 「うわぁーあんな奴が後継者?まだガキじゃん?」 紫の髪が特徴的なその男はそう言って葡萄酒を口に含む。 「ふふ・・可愛いわね・・・食べちゃいたいわぁ・・」 男たちの間から妖艶な女が現れ、指先を唇に近づけ、その指先を舌で舐めまわす。 「お前たち、油断はするな、奴は力に目覚めた。・・・・厄介な力にな」 そう言って男たちはその場から去っていく。 「ジョッシュ・・・」 フィリアは目の前で起きた事態に驚きを隠せなかった。 フィリアに斬りかかろうとした暗殺者が 突如、炎に焼かれた。 その炎はジョシュアから放たれたものであった。 「な、なんだ今のは!?」 「炎!?バカな!!炎系魔法は存在せぬ!」 暗殺者たちも突然の出来事に戸惑っていた。 「いまだッ!!!」 そういってジョシュアは暗殺者たちへと立ち向かう。 「な!!しまった!!」 暗殺者たちも急いで体制を立ちなおすが時すでに遅し。 ジョシュアの剣が暗殺者たちを襲う。 「こんのぉ!!!」 「グハッ!!」 「しまったっ!!」 ジョシュアの攻撃で暗殺者たちが倒れていく。 「ハッ!!どいてくださいっ!!」 その光景に放心状態だった暗殺者を突き飛ばし、フィリアはジョシュアの元へと走り出す。 「フィリアっ!!!」 「ジョッシュ!!」 ジョシュアは自分の元へと走ってきたフィリアを抱きしめながら剣を構える。 「来るなら来い!もう、フィリアは渡さねぇ!!」 ジョシュアは残る暗殺者たちへと叫ぶ。 しかしジョシュアもボロボロであった。 だが先ほどと違い、今自分の腕の中にフィリアがいる安心感と 守らなければならないという意志だけで 敵へと立ち向かう。 「・・・死にたいやつから・・・かかってこい!!」 ・ ・ ・ 時同じく、暗殺者に襲われているアヤとサクラは苦戦を強いられていた。 「もう!!無駄に数が多いですぅ!!」 サクラは暗殺者たちを倒しながらアヤへと話しかける。 「・・・時間稼ぎですね・・・」 「時間稼ぎ?」 「えぇ・・・私たちをジョシュア様とフィリア様の元へと向かわせないようにするための・・」 その直後、暗殺者たちがアヤとサクラから離れ、闇に消えていく。 「え?なに?」 「撤退?・・・このタイミングで?」 「お兄ちゃんたち何かあったのかな!?」 「・・・わかりませんが・・・二人の元へと急ぎましょう!」 アヤはそう言って走り出す。 その後に続いてサクラも後を追う。 (無事でいてね・・・お兄ちゃん!!) サクラは走りながら心の中で願う。 ・ ・ ・ 「その剣筋・・見覚えがある・・」 リオスは眼前にいる曲刀使いの剣筋に見覚えがあった。 「お忘れですか?隊長・・」 曲刀使いはそう言うとフードを取る。 「まさか・・・貴様が暗殺団にいたとはな・・・」 「お久しぶりです・・・リオス隊長」 そういって男はリオスに敬礼する。 「元気そうだな、ルクレッツァ・・・」 「えぇ・・元気ですよ・・・貴方に付けられた傷が痛む以外はね」 「・・・・」 「二年前・・・貴方に付けられた傷が疼くんですよ!!貴方を殺せと!!」 「復讐か・・・」 「今の私はあの時とは違いますよ!!!」 ルクレッツァは剣を取りリオスへと走り出す。 「・・・たしかにあの時とは違うな」 リオスはその場で刀を構える。 「今のお前はあの時よりも」 「弱い!」 向かってくるルクレッツァ リオスよりも早く剣を抜き、おそいかかる しかし 次の瞬間 ルクレッツァは地面に倒れていた。 「な、なぜ・・・!?」 ルクレッツァは瀕死の状態でリオスに問いかける。 「単純な話だ・・・お前より早く俺がお前を切っただけだ」 「昔のお前なら・・・警戒していただろう俺の抜刀術を・・・」 リオスはそういうとルクレッツァのそばで膝をつきルクレッツァを抱きかかえる。 「なぜだ?なぜ二年前俺を襲った?」 「・・・・・」 「誰の命だ?」 「ふふ・・・国王ですよ・・・」 「!?」 「王は貴方の力を恐れていました」 「戦闘力はもちろん、指揮も、兵たちからの信頼も・・・どれもが一流でした」 「そんなあなたが暗殺部隊の隊長になったときから王は」 「自分が暗殺されるかもしれないと考えたのです・・・」 「そして二年前の事件を引き起こしました・・・」 「そうか・・・」 「隊長・・・本当は自分も隊長と一緒に・・・」 「でも、よかった・・・最後に隊長と戦えて・・・」 「・・・」 「隊長・・・相変わらず強いですね・・・完敗です・・」 「ルクレッツァ・・・!」 ルクレッツァは目を閉じる。 リオスも深く目を閉じ、昔の部下へと黙祷する。 リオスの瞳からは涙があふれていた。 ・ ・ ・ 「・・・逃げ・・・た?」 ジョシュアが構えると当時に暗殺者たちは逃げて行った。 「助かったの・・?」 ジョシュアの腕に抱かれたままフィリアは口を開く。 「みたい・・だな・・・」 「ジョッシュ・・あの炎は?」 フィリアはジョッシュの左腕を触りながら問いかける。 「俺にも・・・わかんねぇ・・・でも姉さんを助けたいって思ったら 体がかってに動いて・・・」 ジョッシュは自分の左腕を見る。 そこには子供の頃からある火傷の跡があった。 「何だったんだろう・・・あの力・・・」 この火傷の跡が関係しているんだろうか・・・とジョシュアが 考えていると・・・ 「あぁー!!無事だったんだぁー!!二人とも―!!」 「よかったです・・・お二人とも無事で・・」 サクラとアヤが現れる。 「サクラ!アヤさん!!二人も無事だったんだな!!」 「よかったぁ・・・無事で・・」 「う、うーん・・・無事なんだけど・・・」 「?」 「すっごいイチャイチャしてるところ邪魔してごめんね?フィリアお姉ちゃん、ジョッシュお兄ちゃん・・・」 「え?」 「は?」 サクラに言われて二人はハッとする。 「い、いや、これはだな!!」 「ぐ、偶然!!偶然だよ!?サクラちゃん!!」 二人は慌てて体を放す。 「何やってんだお前ら・・・」 とそこにリオスも戻ってきた。 「リ、リオスにぃ!!」 「別にイチャつくのはかまわんが・・・二人っきりの時にしたらどうだ?」 リオスは微笑みながらジョシュアをからかう。 「違うんだってーーーー!!!!!」 ジョシュアの叫びが村にこだまする。 「じゃぁこの村全体が奴らの罠だったってことか?」 ジョシュアたちは戦いによって壊れた村の宿場で休みながら 先ほどの戦闘について話をしていた。 「あぁ・・・この村の住人たちは知っていたのだろう・・・ だから俺たちが宿場に行こうとしたときにはもう誰もいなくなっていたんだ」 「もう・・・ゆっくりもしてらんねぇのか・・・」 ジョシュアはそう言って左腕に目をやる 「でも!すごいですぅ!!ジョッシュお兄ちゃんの力!!」 「まさか・・・炎とは・・」 サクラとアヤはジョシュアの新たな力について驚きを隠せずにいる。 「・・・」 「リオス様?」 そんな二人をしり目にリオスだけは浮かない顔をしていた。 「いや、何でもない・・」 「ジョッシュ大丈夫?疲れてない?」 「うん・・大丈夫だよ・・つか心配しすぎだよ!フィリア姉さんは!!」 「だって・・・無理してるんじゃないかって・・・心配しちゃうよ・・」 「あぁーその・・・ごめん・・」 「謝らなくてもいいけど・・・心配ぐらいさせて?」 「うん・・・」 「え?またイチャイチャするの?」 「しねぇーよ!!!」 「しないよ!?」 そんなやり取りをする中、リオスだけが難しい顔をしていた。 「どうしたんだよリオスにぃなんか悩み事かよ?」 「・・・ジョッシュ・・・あの力は使うな」 「え?」 「必要な時以外は使うな・・・わかったな?」 「あ、あぁ・・・わかったよ・・」 ジョシュアは不思議に思いながらリオスにうなずく 「エレメントか・・・」 リオスはそうつぶやくとジョシュアの左腕に目を向ける 「禁忌の力・・・ついに目覚めてしまったか・・・」 そう呟くリオスを怪訝そうに見つめながらジョシュアも自身の左手を見つめた。 見慣れたいつもの左腕 (なんだったんだろう・・・あの力・・・) ジョシュアは先ほどの戦いを思い出す フィリアを守りたいという一心であの謎の力が現れた。 「・・・これがあれば・・・姉さんを守れるのかな・・・」 ジョシュアは左腕を月にかざし、力強く握る。 そんなジョシュアを フィリアは遠くから見つめていた 悲しい顔をしながら・・・・ ・・・・To be continued・・・
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