ササヤカな熱

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「西川さんが純潔な好青年?!(笑)」 山田が腹を抱えて笑う。 「何がおかしいねん。間違ってへんやろ」 紀樹は口を尖らせた。 「僕だってお客さんのとこで西川さんの絶倫噂話くらい聞いてますけど?」 ニヤニヤと見下ろされる。 「いつの話やねん」 「わりと最近っすね(笑)」 「嘘やろ。最近なんて誰とも何もしてへんやん」 「人の噂話は四十九日って言いますけど、当事者が渦中にいる限りは消えませんね」 「七十五日やろ」 山田は紀樹の隣の席に腰掛けた。 「そもそも西川さんは見た目がチャラいんですよねー。茶髪やめたらどうっすか?」 「これは地毛や」 「そうなんっすね。あ、ピアスやめたらどうっすか」 「開けてへんやろ。イメージだけで言うな(笑)」 「まあまあ、つまりはそういう事っすよ」 コホンと山田が咳払いした。 「どういう事やねん?」 「イメージ的にチャラくて女遊びしてる人なわけですから、今さら好青年キャラは無理っす」 「別にキャラ作りたいわけちゃうんやけど」 「でも、僕は西川さんは嘘つかないと知ってます。やってないならやってないと思います」 「山田……」 後輩からの信頼に涙がちょちょぎれそうになる。 「嘘つかず正直にい続けたら、そのマミさんにも誠意は伝わると思います」 「山田、ええこと言うやん」 マミヤちゃんをマミさんって呼ぶのは 何か気持ち悪いけどな。 バカ正直でいることは 人付き合いでも、ビジネスでも マイナスになることがある。 バカ正直でいることで 見た目よりも、キャラよりも マジメな思いが伝わるんやろうか。 なるべく女の子たちとは距離を置いて 絡む必要があった時のことは正直に話して あとは好きと伝え続けるだけ。 マミヤちゃんの信頼は徐々に層になる。 積もり積もる日は明日と信じて。
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