ササヤカな熱

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ある冬の午後。 西川紀樹は添付ファイルを 取引先に送った。 『お疲れさん。資料の確認よろしく』 『承知しました』 『何か問題点はなかった?』 『ありません』 『質問あればメールしといて』 『承知しました』 『今月は土日休みある?』 『ありません』 『好きやで。早く会いたい』 既読スルー。 既読スルーから5分後。 『バカ。ビジネス連絡ですよ』 有効温度のメッセージの返信に パソコンのモニターの前で 紀樹は核心をついた。 バカで一歩前進やろ? 触れたモニターは温かい。 後輩の山田が背中越しに 二人のやり取りを覗き込む。 「あちゃ、怒られましたね」 「あほやな。怒ってたらレスせえへんやろ」 「そうなんですか?」 「生涯貞操守ってる奴にはわからんやろな」 「ひどーい」と嘆く山田の頭を撫でた。 「山田のおかげやな。ありがとう」 「それより僕は生涯貞操守る運命ですか?」 「それは知らん(笑)」 バカ正直に生きてれば いつか誰かの熱に触れられる日が 山田にも来ると俺は信じてるけどな。
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