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ある夏の午後。
西川紀樹は添付ファイルを
取引先に送った。
『お疲れさん。資料の確認よろしく』
『承知しました』
『何か問題点はなかった?』
『ありません』
『質問あればメールしといて』
『承知しました』
『今月は土日休みある?』
『ありません』
『好きやで。早く会いたい』
既読スルー。
摂氏零度のメッセージの返信に
パソコンのモニターの前で
紀樹はため息をついた。
後輩の山田が背中越しに
二人のやり取りを覗き込む。
「どうしたんすか?」
「マミヤちゃんからの返信ちょっと俺に冷たすぎちゃう?」
「拒絶反応伝わってきますね」
「俺の何がそんなあかんのやろ?」
首をかしげる紀樹に山田はさも当然のように
半笑いで答えた。
「まあ、西川さんって手当たり次第女の子ナンパしてるイメージっすよね(笑)」
「なんでやねん。貞操守れって言われたから守ってるんやで?」
「僕は生まれてからずっと守ってますよ」
「それは知らん(笑)」
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