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賢明な読者の皆さんはもうお気づきだろう(いや誰でもわかりますよね)、この赤髪の少女こそ、死神のメイが化けた姿であった。
そしてこの成功に味を占めた彼女は、その日から2日後のバレンタインデー当日まで、東京のいたるところでこの手口を繰り返したのである。
そして2月15日、週が明け、メイの営業成績に皆がとびあがって驚いた。
2月の目標件数15件に対して、彼女の成績はその週末だけで、すでに50件を超えていた。
「鬼」の異名をとる死神部長も、もう満面の笑みである。
「いやーメイちゃんやればできる子だと思ってたよ、俺は」
「えへへ、そうなんですよ」メイもにやけ顔が止まらない。
「もう来月には、死神チーフに昇格しちゃうかもね!?」部長は柄にもなくおだてにかかる。
「え、そしたらお給料も……」
「一気に倍増だよ!」
そんな盛り上がる部長とメイを見て、面白くないのはお局の死神・殺姫(サツキ)である。
あんな小娘に、営業成績を抜かれてたまるもんかい。
サツキは、その日も東京に魂を刈りにでかけたメイのやり方を、隠れながらじっと見ていた。
バレンタインデー当日が少し過ぎても、まだまだチョコは男子たちには歓迎されているようだ。
ふん、あんな小娘が喜ばれるんなら……あたしなら、何倍もの数の男をあっという間にイチコロにできちゃうよ。
あんなガキみたいな告白なんて、必要ない。あたしの魅力がありゃね。
事実、サツキはスタイル抜群のセクシーなお姉さんだった。ちょうど、全盛期のニコール・キッドマンを彷彿とさせる感じだ。
メイのやり方を真似ることにしたサツキは、さっそく一人の男の前に現れる。
「ねえ……あたしの作ったチョコ、食べてくれない?」
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