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突然体がぶるっと震えた。そんなこと考えてる場合じゃない。私の方が凍ってしまう。私は家に入って荷物を下ろし、エアコンをつけた。
夕飯の仕度もしなくちゃいけないが、寒いから先に風呂に入ろうと思った。
風呂が沸く間もあの人のことが気になって仕方がなかった。
もう一度行って、いなかったら放っておこう。そう思ってまたコートを着た。こんな寒い日にまた外に出るのは嫌だったけど。
結論から言うと、もう一度同じ場所にその人はいた。
ずっとここにいたの? 一体いつから。
でも、まるで寒そうに見えず、不思議だった。いや、でも寒いでしょ。さすがに。
「あれ、お嬢さん」
お嬢さんってこの人一体いくつ? そのしゃべり方が妙に紳士的でおかしい。
少し年上くらいに思ったが、暗くて細かい所まではわからないから、よく見たら老けてたりするのだろうか。
ってそうじゃない。そんなことを聞きに来たわけじゃない。
「あの、本当に寒くないんですか?」
明日の朝になって凍死でもしていたらと怖くなった。
「大丈夫ですよ」
相変わらずにこにことしている。よく見えないけど、多分。雰囲気的に。心配をかけないようにそんな顔をしているんだろうか。
「ずっとここにいたんですか?」
「そうですね」
その人は事もなげに言った。
こんなこと言いたくないけど、言うしかない。
「警察、呼びますよ」
不審者には見えない。でも、こんなとこにずっといたら凍死するし、それにやっぱり怖い。
「警察?」
その人は首をかしげた。
「それは困りますね」
そう言いながらも、男の人はちっとも困っていないように見える。
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