5人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの時、本当は知ってたんじゃないの?」
「何を?」
「あのチョコに毒が入ってること」
「毒って、ただの食器用洗剤だったろう?」
そうだ、あのチョコには洗剤が入っていた。
ベリーの香り付きの食器用洗剤。その後の調べによると、満にフラれた腹いせにみっちょんが毒(洗剤)入りチョコレートを作ったと涙ながらに白状したという。幸い俺はすぐに吐き出したおかげで、ことなきを得た。
「バレンタインに毒入りチョコなんて、恐ろしい小学生だ」
「本当だな」
「お前、本当は毒入りだって知ってたんじゃないの?」
「知っててなんでお前に食わすんだよ?」
「それは…」
ひょっとして、俺がかのちゃんからチョコをもらってニヤニヤしてるのが気に入らなかったのかな?なんて思ったりもする。
だから自分がもらった毒入りチョコを俺に食わしたのだとしたら、こいつこそ恐ろしい小学生だ。
「昔の話もいいけど、今を大事にしないとな。今日はせっかくのバレンタインなんだし」
満は笑った。
大人になっても、俺達の付き合いは続いている。バレンタインの夜に俺の部屋で過ごすくらい、親密に『付き合う』仲になっている。
最初のコメントを投稿しよう!