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僕の大好きな三毛猫は、いつも冷たい。
チワワのコロは、商店街の人気者だ。
コロは、白とクリーム色の毛並みを持ち、くりくりの目が大変愛らしく、いつも元気に尻尾を振って散歩する。飼い主の源から貰った赤い首輪が、彼の自慢だ。
そんなコロに、皆が可愛いねとコロの頭を撫で、買い物をすればたまにオマケをくれる。お店の動物達もみんな友達だ。
「あら源さん、こんにちは。コロちゃんお散歩して貰って嬉しいねぇ」
「コロの方が元気良くて参っちゃうよ」
商店街の花屋に立ち寄ると、花屋の奥さんに声を掛けられ、源が楽しそうに笑う。
源は、商店街の近所で一人暮らす老人で、最近は足腰も弱くなり、片手に杖を付きながらコロを散歩させている。コロはいつも源の歩調に合わせて歩き、源を見上げてお喋りしながら散歩するのが好きだ。言葉は通じないが、それでも気持ちが通っているような気がする。
そして、散歩の帰りに商店街で買い物をして帰るのが、お決まりのコースだった。
源と花屋の奥さんの会話に、「そんな事言って、ご主人様もお散歩好きでしょ!」と、コロは言うが、源に言葉は伝わらない、それでも源が優しく頭を撫でてくれるから、コロは源が大好きだ。
「今日は、どんな花にします?いつもの?」
「うーん、今日は少し変わった花にしようかな」
源はよく花屋に立ち寄る。源の奥さんが花が好きだからだ。
その腕に犬を抱き、穏やかな笑顔を浮かべた優しい女性。コロは写真でしか会った事がないが、源が優しく見つめて語りかけているのを、コロは知っている。だから、コロもいつも源の膝の上に乗って、一緒に話しかけるのだ。「おはよう!今日もコロは元気だよ!」そう、尻尾を振ってワンと一吠えすると、源は嬉しそうにコロを撫でてくれる。「というわけだ、今日も心配いらないよ」そう言って、写真を仏壇に戻すのが、源の朝の日課だった。
「今日はどんなお花?お花は好きだよ!いい匂いするもんね!」
花屋の前で、源に声を掛けつつ大人しく待っていると、花屋の影から一匹の猫が現れた。三毛猫のミケだ。
今ではすっかり顔馴染みで、ミケの塩対応にもへっちゃらなコロだが、初対面では衝撃を受けた事を今も覚えている。
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