愛があれば

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姉は大学進学を機に東京で一人暮らしを始め、そのまま就職、結婚をした。姉が実家に帰ってくることはぼぼなく、僕が殴られることもなかった。 その間に予期せぬ出来事があった。 僕と義兄さんとの出会いだ。 姉が結婚相手を連れて帰省するまでは「姉に釣り合う男なんているはずがない」と思っていたのだが、会った瞬間に「この人は姉と同じ雰囲気だ……」と分かった。 人に好かれやすく、何でも完璧に出来てしまうのだ。笑みの下に冷たい顔も持っているところも同じだ。 「私たち犬を飼い始めたの。可愛いでしょ?」 姉のスマホ画面には白くて大きな犬が舌を出している写真がある。 「可愛いけど、めっちゃあほヅラじゃん!」 「な、失礼ね」 「だって意外だもん。姉ちゃんってこんな感じの犬が好きだったんだ〜」 犬は黒色の分厚い首輪をしていて、白色の毛皮に映えている。この犬はやや肥満気味なので、首輪が苦しそうに……見えなくもない。だが、舌を出し、尻尾を振り、ひたすら飼い主になつく様が愛らしい。 人間と犬の絶対的な主従関係……。 もし自分が首輪を着けられ、鎖で引っ張られたら……。 「ああ、犬になりたい……」
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