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光に翳した手のひら。白く無骨で優雅さの欠片もない。意識せずとも思い知らされる自己の性と排他的理想の性の隔たり。この背中にせめて羽根が生えていたならば、美しさなどなくとも存在は許されていただろうか。末席を汚すくらいには、許された存在でいられただろうか。
ごろりと寝転んで、遮られて届かない天空に思いを馳せる。瓦礫の粒は死に絶え続けている。閉ざされた心と同じ波長で、開かれた世界へと続く行為を阻まれている。落下しているのか浮上しているのか、目を閉じてしまえば意識は虚空に投げ出される。深く息をして、沈めていく身体。
指先が瓦礫に触れた。チリリと弾かれる意識。
吐き捨ててしまいたい。儘ならない世界ごと銀河の藻屑に消えてしまえ。この胸に巣食う怪物の如き葛藤の醜さも引き連れて。
がなる風。荒んだ胸を通り抜けていく。
どれだけ装ったところで暴いてしまえば内実はこんなもの。
装い飾る化け物だと突き付ける真実の鏡を叩き壊したその奥に映る私自身の瞳は深淵を覗き込んでいる。さあ、奈落の底に堕ちていけと誘う。
ああ、だから私の瞳に映るあの人はあれ程に美しいのか。
私の醜さを内包する彼の美を愛しく想いながら、闇へと身を浸す。
両手でごしごしと擦りつけたまっさらな顔から、仮面がべろりと剥がれた気がした。
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