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後悔・周一の物語
買い出しを済ませ帰路につく車内で嘉人はどうしても聞いておきたい事があった。
「夏月のおばあちゃんはあの家でどうして亡くなったんですか?何があったんですか?ここまで関わった俺には聞く権利があると思う。それに、何を聞いても俺はずっと夏月に関わっていくつもりです」
ハンドルを握っている周一は嘉人を見ることなく真っ直ぐ前を向いたまま話を始める。
「わかった、但しオレの物語だけだ。夏月の物語は夏月が記憶を取り戻しなおかつ夏月が嘉人に直接話すべきだと思う。それでいいか?」
「はい」
明日は登校日で午前中は学校へ行かないといけないが帰りにカブキレンジャーのDVDを借りてきてあげると言うと夏月はとても喜んだ。
久しぶりにクラスメイトが揃い帰りにカラオケに行こうと言う事になった。夏月との約束があったため断ったが、あまりにもしつこく誘われて仕方なくちょっとだけ顔を出して帰ると言う事にしたが、実際には中々抜けることが出来ず気がつくと1時間ほど経っていた。急いでレンタルショップへ行きDVDを借りると祖母の家に向かった。
チャイムを鳴らしたが誰も出てこない。
いつもなら満面の笑みで夏月が出迎えてくれるのだが、もしかすると遅くなった事で拗ねているんだろうか?
ドアノブに手を掛けるとカチリと音がする。
鍵がかかっていない事に違和感を感じていると玄関にローファーが置いてある、サイズから考えても男性用だ。
廊下を進んでいくとリビングから男の荒い呼吸が聞こえて来た、部屋を覗くと柱のところで身動きしない祖母の姿があった。
そして、その先には多々良健がいた。
そこで自宅に到着した。
エンジン音を聞いて慌てて母親が出てきた。
「周一、何度も携帯に電話したのに」
「悪い、運転中だったから。どうしたの?」
「夏月くんが」
「夏月がどうした」
「急に飛び出していったから」
嘉人と周一は顔を見合わせてハッとする。
玄関には置いてあるはずの祖母の家の鍵がなかった。
「母さんは家にいて!オレと嘉人でばあちゃんの家に行ってくる」
そう言い残してもう一度車に乗り込み急発進させた。
歩きでは10分かかるところでも車では2、3分だ、それでも二人には長い時間だ。
何かを思い出して倒れていたら、それ以上にあのことを思い出して心が壊れるのではないか周一は不安になった
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