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「してただろ!中学の時、彼女を部屋に入れてキスしていたから、それ以来カーテンしてたんだよ!昨日だって、カーテン開けっぱなしでもっとエロい事してたって」
「は?昨日は誰も部屋に入れてないし、そもそもあのキスだっていきなりされたんだよ!」
「俺だって・・・驚いたよ」
最後の一言は微かに聞き取れるくらいの小ささだった
「よく言うよ、部屋に入れるとか下心がある証拠だろ」
「別にあの子には下心なんてなかったよ」
「ふーん、じゃあ何で付き合ったんだよ」
「別に付き合ってないし・・・」
なんとなく歯切れの悪い物言いにイラッとしつつも、自分には関係ないと自らの心に言い聞かせる。
「だいたい、いつも門のところでイチャイチャして」
「イチャイチャじゃねぇし、向こうが勝手に押しかけてきて話をするんだよ」
「何?自慢話をするために呼んだわけ?」
「別に、自慢じゃ・・・」
「もう行くから」
嘉人は慌てて夏月の腕を掴む
「あいつ誰?」
「あいつ?」
「昨日、夏月の部屋にいた奴」
夏月はハッとした。むしろ夏月の方こそキスしてるところを見られていた。
「別に、いとこで家庭教師」
嘉人はいぶかしげな顔で
「いとこで家庭教師とキスとかすんの?」
やっぱり見られていた
「成り行きで、って何でそんな事聞いてくんの?今まで無視してきたくせに」
「無視をしてたのは夏月だろ!去年の暮れからよそよそしくなってカーテンも閉めっぱなしになって」
「お前に彼女ができたから邪魔しちゃいけないと思っていただけだし。カーテンはさっき言ったようにお前が部屋でイチャイチャしてんの見たくないから閉めてるのに、玄関でこれ見よがしにしてるし」
これじゃあ結局、気になっていると言っている様なものだと思っても言葉を止めることが出来なかった。
「別に見せつけてないし」
「わざわざランク落としてここに入ったのに、何でお前までここにいるんだよ!両得高とか楽勝だったろ」
「おばさんからお前が青葉を受けるって聞いてここにしたんだよ!」
「何でお前がランクを落とすんだよ」
「そんなのお前と同じ高校に行きたかったからに決まってるだろ」
しばらく沈黙
「何で?」
「す・・好きな高校だからだ」
そう答えた嘉人の顔は真っ赤になっていたが、夏月はずっと下を向いていたので気づいていない。
「意味わかんね」
キンコーン
微妙な空気を打ち破るように予鈴がなる。
「じゃ、行くから」
居心地の悪さを感じていた夏月はクラスが違ってよかったと思いながらそそくさとこの場を去ろうとした時に
「お前、帰宅部だろ。門の前で待っているから」
「は?」
びっくりしすぎて固まっていると嘉人は夏月を追い抜いてサッサと教室に戻っていった。
なんなんだよ、イミわかんね。散々無視しておいて気持ちの整理をちゃんとつけたのに、期待をさせて突き落とすくせに。
僕が嘉人のこと好きなことに気づいていたのに嘉人も同じ気持ちだと思っていたのに。
半年前
クラスの女子に告白されたけど、どうしたらいいかと相談された。
漠然とずっと一緒だと思っていた、嫁云々は子供の話としても、同じ思いだと思っていた。でも、嘉人は違っていた。
「付き合ったら?」
精一杯頑張って答えたのに嘉人は急に機嫌が悪くなりそれからなんとなくギクシャクして部屋でキスをしている所を見てしまい初恋に終わりを告げるとともに、カーテンで心も仕切って隣に住みながらも接点を持つことがなくなった。
高校が別れてカーテンを閉め切ればもう自分の心の傷も埋まっていくと思ったのに、同じ高校でクラスは違ってもいわゆるイケメンの嘉人は目立つしクラスの女子が噂をしているのを聞いてしまうこともある。
さらに高校に入ると女子が嘉人の家に押しかけてくるから門の前で楽しそうにしている姿をちょくちょく見かけるようになり痛みが続いていた。
周一のお陰で吹っ切れたと思ったら、今度は接触してくる。
本当に意味がわからない。
クラスの教室の位置関係上、文系クラスの俺の方が玄関に近い。
速攻帰ってやると心に決めた。
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