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階段を上って左側が嘉人の部屋で半年前迄はほぼ毎日のように来ていた。
有数の進学校である両得を受験する嘉人と同じ所に行きたくて、お互いの部屋に行き来して受験勉強をしていた。
最初に提出した時の進路希望では模試の点数が足りず何度か指導を受けたが11月の模試では充分な点数を叩きだし進路指導の先生も背中を押してくれた。
でも、12月に入って隣のクラスの女子が嘉人に告白したと言う話を聞いてたが断ると思っていた。
クリスマスが近付く中での告白とか下心が見え見えだし、毎年クリスマスは二人で過ごしていてどちらかが他の人と過ごすなんて思ってもいなかった。
ずっと二人でいられると思っていた。
でもそれは俺だけの思い込みだった。
先生に青葉学園へ受験校変更を伝えると変更の必要は無いと言われたが僕の決意が揺るがないことで青葉学園を受験し今に至る。
部屋に入るとカーテンは開けはなたれて僕の部屋がよく見えていた、それは半年前迄の日常の風景だった。
「何か飲み物を持ってくる」
「いいから」
長居とかしたくないし、昨日この部屋でこのベッドであの子とエッチなことをしていたと思うとはやくこの部屋から出たかった。
「俺が飲みたいんだ」
そう言って部屋を出ていく嘉人の背中を見送りながら、何度かこの部屋に泊まってこのベッドに二人で寝たこと、横向きに眠っている嘉人の背中が広くて壁みたいだと思ったことを思い出す。
そういえば向かい合わせには寝たことなかったよな。
それはそれで意識しちゃうから僕的に無理だったけど。
そんなことをぼんやりと考えていると2リットルの緑茶のペットボトルとマグカップを二つ持ってきた。
「お茶でいいよな?」
問いかけに答えることもなくマグカップを見つめる。
「もう捨てたと思った」
「何で?捨てるわけがないじゃん」
子供の頃から使っているマグカップで嘉人はグリーンで夏月は鮮やかなブルーだ。
「もう使わないと思ったから」
「今使っているじゃん」
「そうだけど」
ペットボトルのお茶が入ったカップを受け取り一口飲み込んだ。
捨てられていなかったことや声をかけてくれたことは、やはり嬉しい。
子供の頃から好きだったからそう簡単に気持ちを整理することができなかった。
嘉人は夏月の隣に腰かけて
「それで?」
いきなり振られて返答に困っていると
「夏月が何か勘違いしてるから」
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