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小学5年の夏の日に交通事故に遭い一部の記憶を無くしたが、かすかに覚えているのは、誰かに嫁にもらってやると言われたこと。しかし、言われたとしたら嘉人しか考えられない。
僕は嘉人のことが好きだったからうれしかった。
あの頃は嘉人と同じ高校に行きたくて勉強を頑張っていたが一ランク下げて嘉人の第一希望の高校ではないところに決めた。
先生や親にいろいろ言われたが、ギリギリで入って苦労したくないと尤もらしいらしいことを言ったが、単に嘉人と一緒の高校に行くのが嫌だった。それなのに入学してみると嘉人は同じ高校に進学していた。
何故この高校に入学したのかわからないが、高校では、幼なじみと言うことも隠しているし、というか、学校でも全く話をすることはない。ありがたいことに嘉人は理系クラス僕は文系クラスの為教室が離れていることで校内で会うことはないが、時々あんな風に家の門のところで女の子とイチャイチャしていて、むしろ部屋でやってくれた方が目に入らなくて済むのに、そして嫌いになれればいいのにソレができないから辛くなる。
「はあ」と、ため息を一息ついて家に入る。
玄関に入るなり母親が
「夏月、周一君が来ているのよ!荷物を置いたらリビングに来て」
周一君?誰だろ?
言われた通りに、二階の部屋に行きバッグを置いて、部屋着に着替える。
角部屋の片方はカーテンを引きっぱなしで、本来なら日当たりの良い明るい部屋だが、少し薄暗い。
さっきの子、部屋にいるんだろうか?前に見た子とは違うけど・・・
「はあ」
諦めるって決めてるのに、あんな風に見せつけられて女の子の位置が僕ならいいのにとか思わされて、実際はお前なんかキモいって牽制されてるだけなのに、いつも心を乱されで悔しくて悲しい。
子供の頃は男女とか関係なく好きなら好きって言えて男のくせにお嫁さんになるとか言えたのに締め切ったカーテンを見つめながらモヤモヤとしていると
「夏月!いつまで待たせるの!早く降りて来なさい。」
母親の一喝で我にもどり慌ててリビングに向かった。
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