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周一
リビングの扉を開けるとソファには見知らぬ青年が座っていた。
艶のある黒髪を軽く流して二重の切れ長の瞳も吸い込まれそうで、世間一般ではイケメンと言われる人種で嘉人と同じように女を取っ替え引っ替えしてそうな男がニッコリ笑って
「江端周一です。これからよろしく!」と、爽やかに微笑んだ。
だから誰?キョトンとしている僕を見て母親が「覚えていないか、昔ちょっとだけおばあちゃんの家にいた時に会っているんだけど。いとこの周一くん」
「住んでいたアパートが台風で屋根が飛んで取り壊しになるらしくて、しばらくここに住むことになったのよ。
K大学法学部の二年生で家庭教師のアルバイトをしてるんですって。せっかくだから勉強も教えてもらうことにしたから。」
「そっか、まだ記憶は戻らないのか」
「でも、まぁ、いとこで家庭教師って思ってくれればいいから、部屋も隣ということで」
「じゃあおばさん、夏月くんとミーティングがあるので部屋に行きますね」
「よろしくね、私はこれから買い物に出ちゃうけど、周一くんは自分の家だと思って自由にしてね。周一くんの言うことを聞くのよ、夏月」
そう言い残すと、さっさと出かけてしまった。
「じゃあ部屋にいこうか!」
そう言って何故か先頭に立って部屋に勝手に入って行く。
こういう自分に自信のあるイケメンは苦手だ。
「どうして片側だけカーテン閉めているの?」
「別に・・・」
何か言い訳を言おうとしたときに、周一はおもむろにカーテンを全開にした。
「何んで勝手にカーテンを開けているんだよ!」
僕の言葉なんか聞こえないようにカーテンを全開にしてから、窓を開けはじめた。
窓から嘉人の部屋が見えないように陰へ少し移動する
「ヘェ〜色男君の部屋と向かい合わせなんだ。しかも、かなり近いね。」
「それでも空気の入れ替えはしたほうがいい、窓が二つあって風が通るようになっているんだから。」
「やめろって、閉めて!」
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