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あまりの取り乱しように驚いたのか周一は慌てて窓を閉める。
「色男と何かあるの?」
「別に」
「喧嘩?」
「しつこい」
「知りたい」
「本当に何もない。」
「単に僕が嘉人のことが好きで、でも嘉人がそんな僕を牽制してわざと彼女と仲がいいのを見せつけるから!部屋でキスしているところとか見たくないだけ」
声のトーンが落ちていく
男が好きって、ドン引きするだろうし家庭教師だって断るかもしれない。でも、僕は家庭教師なんて望んでいないから清々する
「ふーん、それで夏月がカーテンを閉め切って見ないようにしてんの?」
えっ?カムアウトスルー?
「そんなの、向こうが見えないように配慮することだし、夏月を傷つけて楽しんでるとしか思えないよね」
「だったらさ」
周一はぐっと夏月の腕を引いて抱きしめるとキスをした。
それは、唇を重ねるだけのものではなく、舌を割り入れ絡める濃厚でいやらしいもので初めてのキスに驚きと気持ちよさに窓から丸見えなのに抗えない。
一度唇が離れても頭の中が痺れて放心していると
「いやらしい顔」周一はそう言うともう一度唇を重ねる。
抱きしめられる手に力が入る。口の中を蹂躙され身体中が反応する唇を弄んでいた周一の唇が耳元で
「お隣さんは彼女にお口でしてもらっているよ(嘘だけど)」
聞こえるか聞こえないかの言葉はキスでとろけた夏月の脳までは届かなかった
周一はカーテンを片手で閉め
もう片方の手は夏月のスウェットの中に滑り込ませていく。優しく握り締められたそれは硬さを増して血がざわめいた。
スウェットのズボンを下げられ、物があらわになっても体の力が抜けて、動けない。
「人にしてもらうと気持ちがいいでしょ」
と言って、すっかり屹立した夏月のモノを口にふくむ。
快楽が稲妻のように背中を駆け上がる初めての快感
「や・・・ら・・でちゃうから」
「くち・・・はなし・・・てぇ・・」
夏月の懇願に耳をかさず手と口の動きを速める周一の口の中に熱を放出してしまった。
「そんなによかった?」
「今日はここまで、スッキリしたら胸のモヤモヤも頭もスッキリしたでしょ?じゃあ、勉強しようか!」
気持ちよさの余韻に浸る間もなく椅子に座らされ、カーテンも全開にされた。
確か隣ではヤッてる最中って言ってなかったっけ?でも、もういいか・・・
確かに周一の言う通りで、見られたくなければ向こうがカーテンを閉めればいい。
今度、ヤッてるところに遭遇したらガン見してみよう。
高々一度のキスでこんなに考え方が変わるとは思わなかった。
周一じゃなきゃこんな風に思わないと思うけど。
僕のファーストキスのはずだけど、一瞬だけど周一の顔が離れたときデジャヴを感じた。
僕は周一を知ってる。
でも何で覚えていないんだろう?
覚えてるのは、おばあちゃんの家に行ったこと。
そして、誰かが僕に話しかけた言葉
「俺が嫁に貰ってやるから」
「今はすべて忘れろ」
あれ?嫁のくだりは今までも覚えていた。
すべて忘れろって?
嫁・・・嘉人じゃない、ずっと嘉人に言われたと思っていた。
でも、違う!おばあちゃんの家で言われたんだ。
そして、何かを忘れている。
病院で気がついた時、母さんからおばあちゃんと僕が交通事故に遭っておばあちゃんが亡くなったことを知らされた。
あれ?本当に交通事故?
目の前の人影が、何か言っている
だれ?
覗き込んでいる人影の輪郭が現れるとともに、猛烈な痛みが襲う。
頭が割れそうなほどの痛みに顔が歪む
「夏月!大丈夫か?」
「顔・・・」
「何か思い出したのか?!」
「いや、見えそうで見えない」
痛い・・・
息苦しさを感じた時、周一が僕をきつく抱きしめた。
「無理しなくていい、思い出す必要は無いんだ」
頭を撫でられているうちに落ち着いてきた。
「少し眠ったほうがいい」
ベッドに横になってぼんやりと窓を見つめる。
あっ、今の嘉人に丸見えだ。
嘉人は最中だっけ?なら、見てないよな。
今更か・・・
あの思い出は嘉人じゃなかったんだ、もともと嘉人は僕のことをなんとも思ってない。
周一は何かを知っているんだろうか?
なんだか、猛烈に眠い。
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