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「?」
「今までだって、記憶がなくても生活できていたんだろ?必要の無い記憶は脳が勝手に蓋をしてしまう」
「それなら、必要になったときに取り出せばいいと思うよ」
「・・・」
やっぱり、何か知ってるんだ、でも言う気はないということなんだろうか?
「ところでこの状況って?」
「夏月を抱いていると暖かいし、夏月もよく眠れたでしょ?頭も身体もスッキリしたなら」
「うわっ!オヤジギャグ!!」
ははははと周一は笑ってから
「夕飯まではまだ時間があるから勉強の計画表を作ろうか!」
大人しく周一の言う通りに受験までの大まかなスケジュールと日々の学習ルーティンを決めていく。
「受験ってもう始まってるんだ」
「まぁね、ただ毎日のルーティンをキッチリ決めていけば時間はちゃんと作れるし高校生活を楽しく過ごすことができる」
「大学受験も大切だけど高校生でいられるのは今だけなんだからさ」
「でも、やりたい事が特に無くて大学とかも全然考えてないし、ただ文系って感じなだけなんだけど」
「だからさ、尚更毎日が重要になる。やりたい事が見つかった時にある程度の偏差値を持っていれば推薦が使えるかもしれないし、修正が効きやすいだろ?」
「そんな風に考えた事がなかったかも」
「まぁ、これは俺の経験則。自分が遊びを優先しすぎて失敗したから俺が担当する生徒には同じ失敗はして欲しくないし、青春は一度だからさ楽しく過ごしてほしい」
「ちゃんと先生してるんだ」
「当たり前だろ!なんだと思っているんだ?」
「エロ先生。あっちこっちであんなことしているんだろうなって思って」
「バーカ、お前だからだろ!フィアンセなんだから」
「ふぃ!!!!」
「嫁に貰ってやるって言ったら、うん♡って言ったろ」
「覚えてねーし」
いや覚えてるけど相手を間違えてたとか言えないし。
「覚えて無くていいよ」
急に真顔になる周一
「昔のことは忘れていいよ、この先もう一度うん♡♡って言わせるから」
急に顔を近づけて触れるだけのキスをした後お互いのおでこをつける。
イケメンはこんな事をこともなげにやって女共、もしかすると男共も虜にしているんだろうか?
てか、やっぱり家庭教師しながら生徒をオトしてるんだろうか?
「周一くーん、夏月!ご飯できたから降りていらっしゃーい」
母さんが呼ぶ声で我に帰る。
おでこが離れるとき、微かに
「元気そうでよかった」
そう言って周一は先に部屋をでていった。
なんだろう?時々、なにか引っかかるところがある。
周一が「今いきまーす!」と、朗らかに言いながら出て行った扉をぼんやりとみつめる。
あの夏がパズルなら本当に少しのピースしかハマっていない。
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