3人が本棚に入れています
本棚に追加
未知についての検討
「そういうわけでこの雑誌を貸すから、良さそうなところがあったらチェックしておいてね」
晴野さんと食事をしてから数日後の朝。唐突に雑誌を渡された。表紙には大きく「御朱印をめぐる」と書かれている。ということは先日の話の続きなのだろう。
「チェックとは?」
「この雑誌の付箋の範囲が今度行く神社の周辺だから、行ってみたい社寺とか気になる御朱印があったらそれにチェックしてねっていうこと。興味なくても、ぱらっと目だけ通しておいてもらえれば、大体の雰囲気がつかめると思うからよろしく」
晴野さんは言いたいことだけ言うと、雑誌を置いて去って行ってしまった。取り合えず雑誌は鞄に入れておいて、昼にでも見てみよう。
そして昼休み。お弁当をつつきながら雑誌をめくる。そこには私の知らない世界が広がっていた。
「流行っているのは知っていましたが、御朱印はこんなにキラキラ? したものでしたかね……」
私にはよくわからない「御朱印ガール」「ばえる御朱印」などといった単語が並んでいる。確かに記載されている御朱印は可愛らしいものが多くて、見ているだけで楽しい。雑誌の最初の方には参拝の手順や基本的なマナー、神社とお寺の参拝手順の違いなどが書かれていて、ただのスタンプラリーにならないような配慮もされている。世の中いろいろあるんだな、と思わせる雑誌だった。
ぱらぱらめくりながら、いくつか面白そうな社寺に付箋を貼っておく。別に全てを一日で回ろうとは思わないし、晴野さんに相談をしてみて行けそうなものを選べばいい。
その後、昼食から戻ってきた晴野さんに雑誌を返すと、彼女は目を丸くしてから笑った。
「天崎さん、めっちゃ張り切ってるね」
「そんなことないです」
「でも付箋すごいよ」
「可愛い御朱印や、気になる社寺が多かったもので」
「いいよいいよ。じゃあメインの神社に近いところをピックアップしておくね。お昼ごはんの場所もこっちで決めちゃっていいかな?」
「お願いします」
「任せて」
なんていうかすごく頼もしかった。確かに晴野さんは仕事の時も頼んだら、なんでも快く引き受けてくれる頼もしい人だ。安らげる場所ができたからか、頼もしさがレベルアップした気がする。
そういう人についていくのも楽しいのかも。そう思うことで考えることを止めている感もあるけど、たまにはそういうことがあってもいいのだ。
最初のコメントを投稿しよう!