関心

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関心

 わたしと夜空さんのファーストコンタクトは微妙な感じで終わった。友達からは夜空さんに関わらない方がいいと言われた。たぶん夜空さんがクラス内のグループからハブられていることとか、その理由とか知っていたんだろう。 「皐月は鈍いから」  そんなふうに言われて、なにも教えてはもらえなかったけど。  確かに鈍いなと自己嫌悪する。繊細な問題なのだから、もっと慎重に行動すべきだったのだ。だというのに、わたしはそもそも繊細な問題であるという認識すらなかった。まったく、自分が情けないっていうか、恥ずかしい。  それでも、なにもしないでいられなくて、夜空さんをぽつんと一人にしておきたくなくて、今日もわたしは彼女に声をかけるのだ。 「お昼、一緒にいい?」 「いいけど」  昨日と同じやり取り。迷惑ではなかろうかと昨日は思わなかったことを思ったりもするけれど、ここで引くのは悔しいし、夜空さんに失礼な気がした。 「今日はいい天気だね」 「そうね」 「昨日も一昨日も明日も明後日もいい天気だね」 「所感が雑すぎるわ」  なんて軽口を言いあいながら昼食をとる。お母さんの作ったお弁当はやっぱりおいしくて、でもそのことを言えないほどには壁を感じていた。  夜空さんからは、わたしに話しかけてこない。なにか働きかけることもない。それはつまりまだ距離とか壁とかそういうものがあるってことだ。溝でないのがまだありがたいってところかな。  どうやったら、そういうものを少なくしていけるのだろうか。あまり意識して何とかしたことがないから、よくわからない。 「夜空さんは何色が好き?」 「濃紺」 「夜空だけに?」 「そんなところ」  ……ああ、会話が終わってしまった。ここは『皐月さんは何色が好きなの?』って聞き返してほしかったなあ! でもそういうことを強制するのもなんか違う。 「わたしはオレンジとか黄色が好きだよ」 「そうなの。緑系じゃないのね」 「皐月だけに?」 「皐月だけにね」  おお、ちょっと盛り上がった。なんだ、夜空さんもかわいいところあるじゃない。  こうやってちょっとずつ、ちょーーーっとずつでいいから仲良くなって、そのうち友達になれたらいいなあ。
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