昼食

1/1
前へ
/42ページ
次へ

昼食

 そういうわけで、ここ最近は毎日夜空さんとお昼を一緒にしています。といっても二人で向かい合ってお弁当を食べながら、ぽつぽつ会話してるだけなんだけど。ご飯が終わったら、夜空さんは読書か宿題をすると言って図書室に移動しちゃうし、それに着いていくほど、くっつきたくない。なんていうか『トイレはみんなで行くもの!』みたいな鬱陶しい付き合いはしたくないんだ。  面倒だし。  面倒だし。  なんと言っても面倒だし!  もちろんそういう子もいる。わたしとはちょっと感性の合わないタイプなんだ……と思ってやり過ごしてるけど、そういう意味で言えば夜空さんと一緒にいるのは気が楽だった。余計なことは言わず、適当でどうでもいいことを自由なペースで続ける。会話がないならないでそれでよし。  友達は、わたしと夜空さんがお昼を一緒にするのをあまりよく思っていない。  そりゃそうだ。  だってクラス内カースト上位のグループからハブられた子と一緒にいるなんて、いつ何時目をつけられるかわかったものじゃない。わたしも目の敵にされるかもしれないし、いじめなんかに発展する可能性だってある。  でもそれはそれでいいと思う。そうなったらなったで、そのときにわたしが夜空さんを守れたらいいなあと思うのみだ。  ちょっと図々しいかもしれないけどさ。  確かに夜空さんは不愛想で無表情で、可愛げがないかもしれないんだけど、少なくとも悪い人ではない。誰かを利用しようとか、貶めようとか、そういう悪いことをするタイプの女の子ではないと、ここ数日話していて分かったのでそれでいい。わたしは勘がいいわけでも、機微に敏いわけでもないけれど、話してみていい人か悪い人かの違いくらいはわかる。  だからもうちょっと夜空さんと仲良くしてみたいと思う。  もし悪い人だったとしても『そっかーー』って言って距離を置けばいいし。  それで済まないこともあるのだろうけれど、今だからできること、今じゃなければできないことを、しておきたいんだ。きっと、今このタイミングでなければ、わたしは夜空さんと関わろうとは思わなかっただろうから。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加