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2 かえるくんと女の子
それから特に大きな出来事もなく月日は流れ、僕たちは高校生になっていた。
かえるくんの背はあまり伸びなくて、僕ばかりがタケノコみたいにぐんぐん伸びちゃってひょろひょろしてる。僕は自分だけ伸びてしまった背が嫌で、かえるくんと距離ができてしまうのが嫌で、少しでも近づきたくて猫背になることが多くなった。もっと近くでかえるくんの声を聞いていたいんだ。
だけど僕のそんな想いに気づかないかえるくんは、僕が背中を丸めていると背中をバンバンって叩いて注意するんだ。
「陽太、もっと姿勢よくしろよ。折角イケメンなのにもったいねぇ」
「僕イケメンなの?」
「あ、いや、イケメンというか……悪くはない、と思うぞ? だからもっと背筋ぴんってしてたら女の子たちにもモテるんじゃないか?」
そんなことを言うかえるくんの目は泳いでいて、歯切れも悪い。最近のかえるくんはたまにこんな感じだ。どこかよそよそしくて、手だってなんだって触れ合えるほど近くにいるのにかえるくんが遠い──。
「…………」
僕は別に女の子にモテたいなんて思ったことなんてない。僕はかえるくんと一緒にいられたらいいんだから。女の子なんて──。そう思うけれど、僕はそれを口にすることができないでいる。それは『女の子』というワードをかえるくんが最近やたらと口にするからだ。そんなに女の子と僕を付き合わせたいの? 女の子と付き合うってことはかえるくんとは今までみたいにはいられないってことなんだよ? かえるくんとしなかったことを女の子とするかもしれないってことなんだよ?
ねぇ、かえるくん。それでも女の子と付き合えって言うの? かえるくんはそれでもいいの?
せっかく大好きなかえるくんと一緒にいるというのに僕の心は雨模様。
僕はかえるくんに気づかれないように小さくため息を零した。
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