3 かえるくんとラブレター

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3 かえるくんとラブレター

 いつもと同じ朝、いつもとは少し違うことがあった。かえるくんが下駄箱の蓋を開けると手紙が入っていたのだ。可愛い蛙のイラストが描かれた封筒にハートのシールが貼られていて、ひと目でラブレターと分かった。かえるくんは慌てて隠したけれど、僕はしっかりと見てしまった。顔を真っ赤にさせるかえるくん。  モテるのはかえるくんじゃないか。いつもみたいにさすがかえるくんって言いたいところだけど、今は言いたくなかった。最近の煩いくらいのかえるくんの『女の子』発言はこういうことなのかなって思った。あれはかえるくんが女の子と付き合いたいって遠まわしに言ってたのか。僕がかえるくんにべったりだから自分が女の子と付き合うために僕にも女の子と付き合えってこと?  ────そんなの……嫌、だなぁ……。じわりと涙が滲むけれど泣かない。泣いちゃったらかえるくんが僕の気持ちに気づいちゃうから。だからなんでもないみたいに笑うんだ。かえるくんが僕じゃない誰かと一緒にいる姿を想像して胸がぎゅっとしても、苦しくて痛くてうまく笑えていなかったとしても笑うんだ。  でもごめん。これ以上は無理だから。 「今日早く行かないとだった。先、行くね」  それだけ何とか伝えてかえるくんから逃げるようにその場を去った。  かえるくん、かえるくんの傍にいるには女の子じゃないとダメなの? かえるくんより小さくて可愛い女の子じゃないとかえるくんの傍にいることは許されないの? 僕は大きくて、ひょろひょろとしてて、こんなでも男だし……僕じゃ最初からダメだったってことなのかな……。  ペタペタと自分の身体を触ってみてもごつごつと硬い細い身体に切なくなる。込み上げてくる悲しみに、泣いてしまわないように唇をキュッと噛んだ。
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