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4 かえるくんと勉強会
あれからかえるくんに特に変わった様子はなかった。だから僕も普段通り、あのラブレターの子とどうなったのかは気になるけれど怖くて訊けないでいた。相変わらず僕とずっと一緒にいるってことは女の子からの告白を断ったってことなのかな? もしもそうだとしても、次は分からない。沈みそうになる気持ちに対応するようにますます丸まる背中。だけど僕は一生懸命背中をぴんって伸ばす。情けない僕の顔をかえるくんに見せたくないんだ。そうするといつもよりかえるくんが遠くて、今はよかったって思う。
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今日はかえるくん家で勉強会だ。かえるくんは頭もいいんだけど英語だけは苦手みたいで、見せてもらった答案用紙のかえるくんの答えは不思議で、思わずくすっと笑ってしまうくらい可愛くて、楽しい。そうするとかえるくんに怒られちゃうけれど、でも可愛いかえるくんが悪いと思う。
僕は数学が苦手で、英語はそこそこできる。だからお互いに苦手な教科の参考書を持ち込んで分からない所を教え合う感じだ。英語と違ってかえるくんの手でスラスラと解けていく数学の問題に僕はうっとりとしてしまう。賢くて格好いいかえるくん。本当にかえるくんは格好いい。
「ここはこうやれば解ける。分かったか?」
「うん。かえるくんの教え方上手だからすごく分かりやすいよ」
「そか」
そっけない口ぶりだけど頬は赤くて照れているんだと分かる。かえるくんは気持ちが顔に出やすいのに、かえるくんの僕への気持ちだけは分からなくて、だから僕は不安になるんだ。
かえるくん、もしも僕がかえるくんに好きって言ったらどんな顔するの? 今みたいに頬を赤くしてくれる? 俺もって言ってくれる? それとも────。
一番可能性の高い答えにペンを持つ手は冷たく、僕の胸はキュッとなった。
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