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5 かえるくんと手作りの
「陽太、あのさこれ──」
そう言って綺麗にラッピングされた袋から大事そうに出したのは蛙型の手作りクッキー。かえるくんの頬は赤くて、きっとこれは女の子からのプレゼントなんだと思う。こないだの子? それとも違う子? でも今はそんなのは関係なくて。何でそれを僕に見せるの? 胸が張り裂けそうに痛くて、モヤモヤとした黒いものが胸の中に渦巻く。
あぁ……ダメだ。
「──一緒に食べようぜ?」
ニカっと笑うかえるくんお大好きだったはずの笑顔が今は辛い。僕は見たくなくて顔を背けた。
「これ……作ったんだ。上手にはできなかったけど、なかなか味がある顔だろう? にしし」
──────え?
不揃いのクッキー。確かに味のある顔だ。優しくて可愛くて、かえるくんと同じ。もらったじゃなくて作ったの──?
「──かえるくんが作った、の……?」
「そうだぜ? 似合わないとか言うなよ? 最近陽太の元気ないから母ちゃんに教わって作ってみたんだ。ほら、口開けてみ?」
かえるくんは蛙型のクッキーを呆けたままの僕の口の中に放り込んで、指に着いたクッキーをペロリと舐めるかえるくん。ドキドキと心臓が煩い。
本当に?
「――うまい、か?」
「うん……、うん……。おいし……」
嬉しくて嬉しくて泣いてしまいそうになるのをぐっと堪えてクッキーをかみ砕く。サク……サク……と口の中に広がるクッキーの甘くて優しい味。
かえるくん好き、好きだよ。どうしよう。好きが止まらない。かえるくんの言動ひとつで僕は幸せにもなるし死にたいくらい悲しくもなるんだ。こんなに好きになっちゃって僕、──どうしたらいいの……?
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