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6.焼きそば(昼メシ)
「こ、これは......」
明日香が見つめる先には、多くの屋台があった。
「祭り、でございます」
「festival(フェスティバル)ですわね! 」
「はい、様々な遊びが揃う中、大半を占めているのが庶民メシでございます。そんな中でも、今日は焼きそばを食べていきましょう」
「焼き、そば? お蕎麦を焼くんですの? 」
「いえいえ、そばと言っても日本食の蕎麦ではありません。中華麺でございます」
「ラーメンに使われていた麺ですわね」
「その通りでございます。有名な焼きそばで言うとソース焼きそば。早速食べていきましょう」
「レッツゴーですわ! 」
-焼きそばの屋台-
「らっさっせー、何個ですか? 」
「では二つ」
「五百円でーす」
渡されたのはプラスチックの容器に入った焼きそば。彩りを加える紅生姜が、我々を誘惑する。
輪ゴムで止められているので手に反撃されないようゆっくりと外すが、その時間が待ち遠しい。
輪ゴムが外れた瞬間待ってましたと言わんばかりに、プラスチックの容器が勢いよく開いた。やはり焼きそば側も早く食べられたかったのだ。
割り箸を割り、焼きそばへ突き刺す。挟んで持ち上げる。美しさはないが、今すぐにでもかぶり付きたいと思わせる魅力はある。不思議だ。
口にいれた瞬間広がるソースの旨味。中華麺によく絡み付き、どこを食べても美味しい。青のりがまたよい香りを出しており、焼きそばの潜在能力を覚醒させる。
次はやる気の無さそうなキャベツ。でもそれでいい。焼きそばのキャベツはそれでなきゃ、キャベツじゃない。食べると、舌を包み込む甘味が感じ取れる。と思うとその甘味はすぐに消える。幻の甘味である。
次に豚肉。ソース色に染まった肉は、香りで誘惑してくる。美味しいぞー。美味しいぞーと。そして、口に放り込む。ソース色ではあるが、味はしっかりと肉。やはり肉に勝る食材はこの世にないのかもしれない。
ズルズルズルズルと聞こえる幸せの音。食べる度にソースが中毒性を増し、もっと欲しくなる。
そして最後に紅生姜。ソースに依存していた舌を刺激し、もとに戻してくれる。ああ、焼きそばとの別れが恋しい。そんな思いも消してしまう悲しい紅生姜。
「おいシィイイイイイイイイイ!!!!」
-数分後-
「お、お祭りさいこぉー」
祭り中毒になった明日香であった。
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