7.牛丼(夜メシ)

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7.牛丼(夜メシ)

「お嬢様、そろそろ私が調べられる庶民メシは少なくなって参りました」 じいやから出た衝撃の言葉。しかし、明日香はしっかりと準備をしていたのだ。 「安心するのですわじいや。こんなこともあろうかと、助っ人を用意してありますわ! 」 登場したのは、ヲタクらしい少年だった。 「田中 虎太郎です。食べることが好きで、お店には詳しいつもりです。よろしくお願いします! 」 「というわけで! 田中様に庶民メシを教えてもらいますわよ!! 」 -すき家- 「ここは『すき家』です。ゼンショーホールディングス傘下の株式会社、すき家が運営している牛丼チェーン店で、日本国内に1930もの店舗があり、海外にも進出しています。豆知識なのですが、すき家の牛丼やカレーのサイズは、プチ・ミニ・並盛・肉1.5盛・大盛・特盛・メガがあるんですが、その更に上にキングサイズがあるんです。その量、なんとメガの2倍! カロリーは2248kcalもあり、値段は税込990円だそうです」 「すごいお店なのですわね......」 「はい、では早速入っていきましょう」 店内は牛丼のいい香りがたちこめており、心が癒される。 席につき、牛丼を注文。運ばれてきたのは幸せ大盛丼。ホッカホカな白米の上にのった牛肉はタマネギを巻き込み、鎮座していた。 牛肉を退けると、つゆを吸ったいい色のご飯と対面。そのキラキラな日本の味を口に放り込む。しかし何か物足りない。そう、ご飯は一緒に食べたものによって姿を変え、適応し、その能力を伸ばす。ご飯本来の味を楽しむためにはおかず、つまり牛肉が必要だ。 パッと牛肉に目をやる。白米と出会うことを求めているようだ。その願いを聞き入れるは我々人間。では、二人の感動の再会。その味、堪能させていただこう。 なんとも言えない旨さの牛肉がご飯に絡み付き、ハーモニーを奏でている。ご飯はご飯で、また染み込んだつゆをじわりじわりと溢れさせ、まるで感動の涙を流しているようだ。 そしてタマネギ。ご飯を取り合う牛肉との勝負。勝つのは旨味の強い牛肉か。それともつゆを吸い、甘味が溢れるタマネギか。ご飯が選んだのは牛肉。やはりタマネギは勝てないが、二人の関係を応援し、味をさらに高度なものへと変身させる。 まさに食の三角関係。これが人気チェーン店になった秘密であるのかもしれない。 「おいシィイイイイイイイイイイ!!! 」 -数分後- 「ふう、助かりましたわ田中様。これからも宜しくお願い致しますわね」 「はい! 明日香さんを、庶民メシの極みに到達させてみせます!! 」 意気込む二人を、じいやは優しく見つめるのであった。あの日の様に。
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