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ゆっくりと味わい合う。舌は入り込むことはなく、ただ唇の味だけを楽しんでいるようだった。
もっと、と思ったときにはすでに遅く、ボスの唇が離れていく……名残惜しい。
「今日はもう疲れただろう、休みなさい」
言葉ではそう言うのに、ボスの腕は私を抱きかかえたままだ。
「ボス、離してくださらないとなにもできません」
「ああ」
そこで初めて、自分が抱きしめていたのが誰だかわかったかのように腕を離す……。離れたくない、もっと触れていたい……体の奥に、希求の炎がちらついた。
「先にシャワーを使え。オレは後からでいいから」
「いいえ、ボスこそ先に使ってください」
そこではっと気づく。左手……包帯をしたままシャワーできるのかしら。
「怪我があるからな。誰かが手伝ってくれるといいんだが」
「ボ、ボスっ」
「オレはなにも言ってないぞ。誰かが手伝ってくれたら助かるなぁ、と独り言を言っただけだ」
からかわれていると知りつつも、あらぬ想像をしてしまうわたしの煩悩。ボスはそれを知ってか知らずか、こう言った。
「今日はもう遅いし、さっさとシャワーをして眠ろう。ダブルベッドだから一緒に眠ることになるが、オレは手を出さない。日向とはちゃんとロマンチックなシチュエーションで、記憶に残る一夜を過ごしたいからな」
にやり、と笑ってみせるボスの、そんな表情でもたまらなく美しい様子に、うっとりとしてしまう。でも、そうか……ベッドは一つ。一緒に眠る以外に方法が、ない。わたし……ちゃんと眠れるだろうか。
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