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「赤木さんがくること、分かってらしたんですね。だから修哉くんを煽るような言い方をして……」
「怒らせればあの男の注意はオレに向く。赤木が来るまで、日向に注意が向かないようにさせたかった」
赤木さんが渋滞で遅れているというのは嘘で、わたしからデートの返事を聞きたくて堪らなかったボスは、赤木さんに車で待機するように言っていたらしい。
「もし十分経ってもオレが現れなかったら、到着ゲートに迎えに来いと言ってあったから、赤木が来ることは計算済みだった」
「わたし、不安と心配で心臓が持たないんじゃないかと思いました」
「すまない」
「それに、武器を持ってる人にタックルするなんて信じられません。もし大怪我したらどうするおつもりだったのですか」
「リーチは計算済みだし、見たところあの男は実践慣れしていない。だから大丈夫だと確信した」
「でも」
「もう黙って」
ボスがわたしを見る。いつも目が合いそうになると逸らしていたボスはもういなくて、慈しみに溢れた目でわたしの心を射抜く人が、いる。
「奏様、もうじきホテルです」
見つめ合うこと数秒の後、運転中の赤木さんが後ろを見ることなく告げる。
「わかった。日向を部屋まで送ってくるから待っててくれるか」
「承知しました」
車を降り、赤木さんが荷物を出してくれる。そのときにウィンクされた……なんだろう?
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