第二十四章 コンプレックスを超えていけ

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 ボスが瞠る。ようやく口が半分開き、一言二言言いたそうにぱくぱくとさせ、一旦閉じる。ふっと息をついて出てきた言葉にまた胸が疼いた。 「ありがとう、オレももっと日向ことを知りたい」  それから、いつもの顔を取り戻すと「ゆっくり休みなさい、オレはそろそろ帰るから」と踵を返す。お見送りをせねば、と慌てて追いかけ、部屋のドアを開けたときにボスの携帯が鳴った。 「もしもし、赤木か。どうした? なんだと? いや、オレのことはいいから早く行け。大丈夫だ。タクシーで帰るから」  赤木さん、どうしたのだろう。何か悪いことでも起きていなければ良いけれど。 「赤木のやつ、腹が痛いから病院に行くと言ってきた」 「病院? 心配ですね」 「赤木はオレが小さい頃からのボディガード兼運転手なんだが、今まで腹が痛くなったり風邪を引くことなど一度もなかったのに、どうしたんだろう」  独り言のように呟くボス。ふと、荷物を渡してくれた時に赤木さんがウィンクしてくれたのを思い出した。 「日向はなにも気にせず休んでくれ。オレはもう行く」 「待ってください。ボスはどうやって帰るんですか」 「タクシーを呼んでもらうから大丈夫だ」 「そ、それなら」  赤木さんの本意がそこにあるかどうかはわからない。でもあのウィンクを「応援」と受け取ってもいいだろうか。 「良かったら泊まっていってください。わたし……一人になりたくないです」
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