第二十四章 コンプレックスを超えていけ

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 ボスは器用にシャワーを浴びたらしい。わたしが先にバスルームを使わせてもらい、髪を乾かしている間に出てきた。ちゃんと備え付けのパジャマを着てくれていて助かった。もしもタオル一枚とかで出てきたら、目のやり場に困る。 「怪我が利き手だったら日向に手伝ってもらえたのになぁ」  そう言うボスはまた嬉しそうに笑むから、わたしはどんな顔でどう返事すればいいのかわからなくて、本当に困る。 「なんだ、まだ寝ないのか」 「いえ、あの」  本当に同じベッドで眠るのだろうか。いや、眠れるわけがないのだけれど、ボスの隣に、なんて恐れ多くて……。  そんな葛藤も見破られてしまうのか、ボスはコンフォーターをまくると中に入り「おいで」と手招きする。ずるい……そんなことされたら、従わざるをえないのに。 そっとベッドに手をつく。軋まないマットレスの触れ心地と柔らかさ。ドキドキしながらボスの隣に入ると、抱き込まれた。 「日向、なにをビクついてる」 「いえ、あの」 「お前の気持ちが向くまで待つと言っただろう。信じてないのか」 「違います、そうじゃなくて」  きゅっと目を閉じる。心のうちをボスに吐露することが、こんなにも緊張するなんて。 「ボスのことはちゃんと信じてます。ですが、やはり、その、慣れなくて」 「慣れていると言われても困る」 「そうですが」 「いいから」  組み敷かれ、知らず心臓が早鐘のように打つ。ボスは無理強いしないことはわかってる。わかってるのにわたし……期待、してる?
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