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最終章 忘れていた約束
翌朝からは怒涛だった。
ボスはゆっくり話す暇もないまま、急な海外出張でリスケジュールした会議や仕事を休日返上でこなし、わたしは疲れからか風邪を引いてしまい、三日ほど仕事を休んだ。
なかなか顔を合わせられないまま過ぎた日々。ストレスにならなかったわけじゃない、不安にならなかったわけじゃない。
でもボスは、LINEなりメールなりでちゃんと気持ちを伝えれば、必ず返事をくれた。
歳は下だけれども、わたしより遥かに大人だな、と思う。わたしももうじき三十歳になるのだし、しっかりしなければ。
休んでいた間に両親に修哉くんと別れたことを話せた。彼が犯罪者だということも。
あの後、刑事の杉山さんから何度か連絡をもらい、流石に隠し通すことはできなくなったのだ。
両親は「結婚する前に真実がわかって良かった」と喜んでくれて、内心ホッとした。
ボスと付き合うようになったことはまだ言っていない。一応、何回かデートをしてお互いの気持ちがしっかり固まったら報告しようかと思っている。
そして今日は、あの日以来初めてゆっくり会える日だ。箱根のオーベルジュに行こう、と誘われたのだ。
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