1年生1「夏生、じっちゃんとジャンケンの特訓をする」

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 次の日の給食時間。 「それで、ジャンケン強くなったん?」  ゆたやんがその日の目玉、きな粉パンを頬張って聞いてきた。 「その後は、じっちゃんに勝ったり負けたり。じっちゃんにいつも勝ってたわいとしては、弱くなった気分や」 「でも、パーを出して負ける事は無くなったんやろ」 「そうやで。それに無心でジャンケンに挑めるようにもなったしな」  ミカンが「ねえー。今日はきな粉パンが残ってるよ。おかわりするひと、前まで来てやー」と声をかけ、何人かが前に集まる。 「待ってくれー」  とわいも、残りを口に詰め込んで、走っていく。 「よしやるよ」  今日も、ミカンが仕切ってジャンケンが始まろうとする。 「あ、待って」  わいは急いで足を組んで座ると目をつぶる。  そして、暗闇の中、一人坐禅を組んでいる自分をイメージした。  無心、無心、無心、無心。 「何やってんの。ほら、夏君ジャンケンすんで」 「最初はグー、ジャンケンポン」  わいはグーを出した。  ミカンもグー。  他の人はチョキ。 「勝ったーー。やったで、じっちゃん」 「よし!!」  とミカンの声も聞こえる。 「チェッ、またこの二人かよ」  と、他のみんなはゾロゾロと帰って行く。   「よし、無心や、無心」  わいは、座って目をつぶり、  一人坐禅を組んで悟りを開いた。  パッと目を見開く。 「行ける!!」  ミカンを見ると、炎をメラメラと燃やし激しく燃えているオーラが見える。そのオーラが四方八方に飛び散って破裂する。 「ヒィーーー」  更に、ミカンが迫ってくる。わいは、一歩下がって腰が砕けた。そしてオーラに飲み込まれた。 「最初はグー。ジャンケンポン」  わいはパー。ミカンはチョキ。 「よーーーし!」  と、ミカンが雄叫びをあげる。  強えーーーー! 「ハハ、ハハハハハ」  ごめん。じっちゃん。負けた。  でも、残心やな。  心を乱さず、相手を尊重する。  ありがとう、じっちゃん。  わい、強くなれた気がする。    きな粉パンを皿に乗せた、ミカンが前を通り過ぎる。その迫力に、わいは2、3歩後ろによろめいた。やっぱり、ミカンにはオーラが見える。その、後ろ姿をみながら、わいは唾を飲み込んだ。  いろいろありがとう、じっちゃん。  でも、やっぱり、ミカンには食べ物の勝負では勝てへんわ。  わいは悟った。 Fin
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