3人が本棚に入れています
本棚に追加
※※
定期的に行われる飲み会は、一体誰が望んでいるのだろうか。少なくとも私は一刻も早くこの場から姿を消したいのに。
上司のグラスが空けば酒を注ぎ、テーブルに並んだ料理はほとんど口に出来ずに冷めていく。斜め向かいの席に座る彼女も、昼間私に声を掛けた割にこの場では一言も口を利いていない。
要するに、自分より下の立場の人間にいて欲しかっただけ。
そんな事、とっくに分かっているのに。なんで私はまたここにいるのか。
唯一の味方のように握り締めたおしぼりからは、生乾きの嫌な臭いがした。
「あれ?藤間さん?!」
俯けた顔を上げさせる甲高い声。聞き間違いでも、呼び間違えでもない。そこには確かに藤間さんの姿があった。
黙々と働く姿は立ち上がった状態で、すらりと伸びた脚は迷う事なく空いた座布団に向かう。
「今日は時間が空いたので参加させて頂こうかと、と言ってもそろそろお開きでしょうか?」
その場にいる人間が一斉に口を開く。
そんな事ないですよ、来てくれて良かった、お酒は飲めるの?等々、珍しい生き物を囲むように騒めきは広がって、彼女の周りに散らかるように落ちていく。
予想外の人物の登場に盛り上がったと思われた場の空気はしかし、飲んだ酒の量に比例して怪しい雲行きになっていった。
最初のコメントを投稿しよう!