分かってくれよ!

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 それから数日間、早めに登校して自主練をしていたが、いつも通り校門前に集まった部員たちは、そこに浅野が来ていないことに気づいた。 「あれ、寝坊したかな? ライン来てる?」 「いや、なんも来てない」 「レギュラーの座を奪うチャンスじゃね?」  田口がぐるぐると勢いよく腕を回すと、小野寺が鼻で笑って 「ムリムリ。お前身長ないし」 「いやジャンプ力あるから。舐めんなよ」 「お、みんな揃ってるな」  浅野が、なぜか校舎側からやってきた。なんだよずっと待ってたんだぞ、と文句を垂れる溝口たちに拳を突き出すと 「さあ、中に入ろうぜ」  握った手を緩め、目の前で体育館のキーを揺らしてみせた。 「まさか盗み?」 「あほか。先生に言ったら貸してくれたんだよ。熱心で素晴らしい、って褒められたし」 「先輩に対する嫌味じゃね?」 「ま、始めようぜ!」  窓を開けて換気をしつつ、ボールに触ると体がウズウズする。 「シュート練習!」 「あ、俺ドリブルやりたい」 「じゃあカットしようっと」 「そしたら2対2でやったら良くない?」 「確かに」  グーパーでチーム分けしてすぐに試合開始だ。ジャンプボールでは一番身長の高い溝口が難なくボールを取った。振り返りパスを試みる。が、弾かれた。すぐに重心を切り替えて追いかける。シューズが床を踏みしめるキュッキュっという音に緊張感が高まる。 「おい、こっち!」 「パス!」 「ナイッシュー!」 「ドンマイドンマイ」  ボールを奪われれば悔しさに顔が歪み闘志が燃え上がる。ボールを持てばすぐにターンしてゴールを目指す。  白熱していったそのとき。 「おい1年!」  ドスの利いた高野の声が響き渡った。振り返ると、高野が扉の前で仁王立ちになっていた。冷たい視線に射すくめられ、その場にいた1年が一斉に扉の方を見て固まる。直前に浅野が放ったシュートがリングをぐるぐると周り、外へと落ちた。バウンドして転がっていく音が気まずい沈黙の間を転がった。  誰からともなく仁王立ちの高野の前に整列する。 「なんで勝手に入ってるんだ」 「先生に言ったら鍵を貸してくれたんです」  浅野が口を開くと、視線で射殺(いころ)されるかと思うほどに睨まれた。 「チームワークを乱すやつはチームには要らない」  その日のうちに、その言葉の重みを知ることになる。
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