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「……そうもなる。どういう対応していいのか分からなかったんだ」
私は先生らしくない声に、先生の顔を見あげた。
「え?」
「知ってたよ、小説書いてたことも全部」
「ウソ……知ってるはずない」
私がつぶやくと、先生は唇をぐっと噛み締める。
「うそなわけあるか! 知ってたよ! 調べて、聞いて、全部知ってた! 本も全部読んだよ! すごいと思ってた! 応援してた! どこにいるかわからなくても、杏奈も頑張ってる。そう思うだけで頑張れた! そんな、ずっと好きだった相手が……自分から車の前に飛び出て自殺して、瀕死の状態で目の前に運ばれてきて! そんなこっちの気持ち、考えたことあるのか‼」
泣きそうな顔で、声で、そう怒鳴られて……。
私は思わずもう一度先生の顔を見る。目頭に熱いものがこみあげてきていたのが、自分でもわかった。
すると、先生は、怒鳴ってごめん、と小さく言う。私は何を言っていいのかわからなくてただ、黙り込んだ。
「杏奈の書いた本、何回も読んだ。医者がよく出てきたよな。よく取材してあって、勉強にもなった」
「そんなの……」
お母さんも褒めてくれた。ファンも多少なりともいた。
でも、私は自分で自分が信じられなくなった。書けなくなって、どうせ、私なんて、って思って、そして……。
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