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電話を切った先生は、
「明日から住めるって。明日の朝、鍵持ってきてくれるってさ」
と、私のスマホを私に返す。
私はそれをひったくるように取り戻すと、
「そうですか。それは良かったです。では」
と頭を下げ、さっと一ノ瀬先生の隣を通り、私は自分の家の鍵を開け、ドアノブに手をかける。すると背後から、ドン、と先生の右手が私の顔の横を通過して、ドア扉に先生の手が押し付けられたことに気づいた。
(壁ドンだ! いや、ドアドン? なんだそれ……)
この体勢のまま振り返ったら完全にリアル壁ドンだが、そんな怖いことはできない。
どうしていいかわからず、振り返ることもできずに、私はそのまま固まっていた。
「……あ、あ、あ、あ、あ、あの?」
「明日の朝、大家さんが鍵を届けてくれるって」
背後から同じことを二度言う低い声に、私は心臓が跳ねる。
「そ、そ、それは先ほど聞きました」
「今日、泊めて」
当たり前のようにそう言われて、私は固まる。
泊めて? 泊められるわけないじゃない!
幼馴染とはいえ男の人だし、何より今は、やっと離れられた、と、ほっとするくらいには苦手な人なんだから……。
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