冷たい彼との物語

6/18

157人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
 電話を切った先生は、 「明日から住めるって。明日の朝、鍵持ってきてくれるってさ」 と、私のスマホを私に返す。  私はそれをひったくるように取り戻すと、 「そうですか。それは良かったです。では」 と頭を下げ、さっと一ノ瀬先生の隣を通り、私は自分の家の鍵を開け、ドアノブに手をかける。すると背後から、ドン、と先生の右手が私の顔の横を通過して、ドア扉に先生の手が押し付けられたことに気づいた。 (壁ドンだ! いや、ドアドン? なんだそれ……)  この体勢のまま振り返ったら完全にリアル壁ドンだが、そんな怖いことはできない。  どうしていいかわからず、振り返ることもできずに、私はそのまま固まっていた。 「……あ、あ、あ、あ、あ、あの?」 「明日の朝、大家さんが鍵を届けてくれるって」  背後から同じことを二度言う低い声に、私は心臓が跳ねる。 「そ、そ、それは先ほど聞きました」 「今日、泊めて」  当たり前のようにそう言われて、私は固まる。  泊めて? 泊められるわけないじゃない!  幼馴染とはいえ男の人だし、何より今は、やっと離れられた、と、ほっとするくらいには苦手な人なんだから……。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

157人が本棚に入れています
本棚に追加